介護・宅配で切り開く、ワタミ100年企業への道筋《新「本業」で稼ぐ》
介護事業はほかの事業に比べ、ずば抜けて採算性が高い。同事業の営業利益率(09年度実績)は15・4%で、外食事業の4・7%、宅配弁当事業の7・8%を大きく上回る。
これは、いったん顧客をつかまえることができれば、700万円に設定した入居金に加え、20万円前後の月額利用料金を安定的に確保できることが大きい。「外食で培った、一瞬で勝負するというサービス精神を生かし、毎期20棟を開設しながら、入居率は9割超を目指している」(ワタミの介護の清水邦晃社長)。
さらに重要なのが、介護におけるワタミらしさの提供だ。それは、おむつ、特殊浴、経管食、車いすといった、それまで介護業界内で当たり前とされてきた慣行を排除した“4大ゼロ”という考え方にある。
「入居される方が、仮に自分の父親、母親だったらどう思うか」(渡邉)。そうした視点に立ち、入居時は経管食でも、もう一度口から食事ができるように、特殊浴から普通の入浴ができるようにとサービスを徹底。食事の面でも、自社で加工した飲み込みやすい「ソフト食」を提供するなど、多種類をそろえている。
介護に続き利益を牽引しているのが、08年に参入した宅配弁当事業。実は、ワタミは06年に百貨店内での弁当事業に参入したが、客層と合わずに1年で撤退した経験がある。「外食のおいしい食材を高齢者の方に食べてもらいたい」(ワタミタクショクの吉田光宏社長)という思いを貫き、九州全域と山口県、関東の一部地域で高齢者向けの宅配弁当サービスを運営していたタクショクを買収した。実は、こうして外食以外の事業に相次ぎ参入を果たした背景には、「6次産業」というワタミが掲げるビジネスモデルがある。
6次産業とは、1次(農業、水産業など)、2次(製造業など)、3次(小売り、サービス業など)産業を足したもの。ワタミは02年に2次産業である食材の集中仕込みセンターの稼働を開始し、1次産業の農業事業にも参入している。外食以外でも、川下の3次産業にもっと広く根を下ろせば、6次産業の枠組みはさらに広がるという構想だ。