日本企業は、「水リスク」への意識が低すぎる コカ・コーラが誇る、水リスク管理術とは?

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翻って、日本は水が豊富で枯渇するリスクはないと考えている企業が多く、水リスクにあまり敏感ではないように見える。だが、グローバルに事業展開する日本企業にとって、「水リスク」は決して無関係なものではない。彼我の差は単に地理的要因だけにあるのだろうか。

「ウォーター・スチュワードシップ」の登場

欧米企業が一段と水リスクに留意するきっかけとなったのが、「ウォーター・スチュワードシップ」という概念の登場である。すべての関係者が統合的に水資源を管理するための行動規範で、2008年ごろから欧米を中心に一段と注目を集めるようになった。特定の地域の水の課題に対応するための手段として効果があるとされ、さまざまな国際NGOが企業に取り組みを促している。

それぞれのステークホルダーがこれに則り、水資源マネジメントを実施することにより、水の利用について、そして水の重要性を社会の中で認識する。水と衛生面が人権に与える影響も顕示されることから、人間の幸せと公平性の確保にもつながるものである。

NGOの世界自然保護基金(WWF)は、この「ウォーター・スチュワードシップ」を推進し、企業の水リスクへの対処を積極的にサポートしている。彼らがまず企業に勧めるのは、(1)水の意識向上、(2)水の影響に関する知識、(3)社内での行動、(4)集団行動、(5)ガバナンスへの影響、の5つのステップだ。

2007年からWWFと協働し、世界50カ国で河川流域の保護活動を実施するのが、コカ・コーラ社(ザ コカ・コーラ カンパニー)だ。水使用の効率化をはじめ、製造工程で発生する二酸化炭素排出量の削減など、WWFのサポートの範囲は同社のサプライチェーン全般に及ぶ。同社は、自社および約200カ国・300ものボトラー個々に、2020年までの環境の持続可能性について目標を設定している。この綿密さを実現できているのもWWFとの協働の成果だ。

外部機関との連携で包括的な水リスクを回避する

WWF-UKのウォータースチュワードシップ・マネジャーのクレア・ブレムリー氏は、こう語る。「水リスクは、企業、政府、そしてNGOとで共有されるべきもので、対応にはお互いの協働が必要です。単独の機関で水使用が効率化できたというだけでは、リスク軽減には不十分。河川の流域および事業領域をまたぐステークホルダーとの権利調整など、包括的な水リスク回避に多くのツールやガイドラインが役立つのです」。

コカ・コーラ社のほかにも、マークス&スペンサー、SABミラー、H&Mといった欧州の代表企業が、WWFとともにウォーター・スチュワードシップのプログラムを実施している。いずれも、水リスク対応の先進的な取り組みを行う企業として知られている。

そのほか、水に関わる取り組みを先導する機関には、国連グローバル・コンパクト(*)の中のCEOレベルの企業同盟「CEOウォーター・マンデート」がある。企業に対し、水の資源管理に関する模範事例を広め、一段と推進することを目的とする組織だ。2014年11月現在で85社が加盟し、企業数は年々増加してきている。

※各企業・団体が責任ある創造的なリーダーシップを発揮することによって、社会の良き一員として行動し、持続可能な成長を実現するための世界的な枠組み作りに参加する自発的な取り組み。署名企業・団体は1万超。

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