さらに、近年企業が「水リスク」により高い関心を寄せる背景には、英国のNGO「カーボン・ディスクロージャー・プロジェクト」(CDP)の影響もある。もともと企業に対し、二酸化炭素の排出量を調査していた機関だが、2010年から水についても「CDPウォーター・ディスクロージャー」調査で情報開示の要請を始めた。
2014年は日本企業をターゲットに質問状を改訂、前年の7倍超となる150社を調査対象とした(回答企業は79社)。全世界では2200社を対象とし、前年比8割増となる1064社の回答をみた。CDPウォーターへの署名機関数は2014年で573社となり、この4年間で4.2倍に増加した。運用資産総額は60兆米ドルにのぼり、企業にとって影響力が無視できない存在となっている。
きめ細かく地域別対応を進める欧米企業
このような中で、欧米企業は具体的にどのような水リスクへの対応をしているだろうか。
まず、英国とオーストラリアに本拠を置く多国籍グループのリオ・ティント。40カ国で鉱山や工場などを操業している。事業所がある世界の各地域の水のリスクを特定し、水マネジメントは採掘・加工をはじめとする事業運営に不可欠として積極的に投資する。
地域に偏在する水リスクの測定は、「水の制約」「水の余剰」「生態系への影響」の3つの観点で実施、製品トン当たり淡水使用量など定量的な目標を設定し、監査可能なかたちにしているのが特徴だ。
ロンドン本拠の世界最大級の醸造会社SABミラーは、WWFと「ウォーター・フューチャー・パートナーシップ」を組む。水不足が深刻化している地域で、企業、支援者、政府、農家、コミュニティなど地域での集団行動を促すものだ。
対象地域16カ国以上を先進国・新興国・途上国に分け、各地域で異なる水資源管理の開発パターンについて比較した。国により背景が異なり、食料・水・エネルギーの3つのネクサス(つながり)も違う。プロジェクト実行の際には、各地域での対応策を見つけ、インフラの整備も含め、政府、企業、コミュニティなどの関連するステークホルダーが連携して行動することが必要としている。
日本企業の水リスクも対岸の火事ではない
ペプシコと米国コロンビア大学地球研究所コロンビア・ウォーター・センター(CWC)のように、大学と企業が協働して水リスクの対応を行っている事例もある。プロジェクトは、ブラジル、インド、マリなどで実施され、農民の水・エネルギーの効率利用を促している。
ただ、こうして地域ごとに導き出した解決策も、長い年月を通して通用するものではない。つまり、その後さらに、それぞれの段階で対応を変える必要がでてくるということである。
グローバルに活動をしている欧米の企業は、水のリスクを企業戦略上の重要課題に位置づけ、既に積極的な取り組みを進めている。持続可能な水管理システムがついえれば、人々の生活にも影響を与えるとともに、企業の操業を揺るがすリスクにもつながる。
日本企業も、CSR/サステナビリティの要素として、国外のサプライチェーンも含めた水マネジメントを行う必要がある。水リスクを深刻に受け止め、ぜひ行動を始めていただきたい。
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