「予算ゼロ」で地域の課題を解決

2020年代を先取りする議員たち

図書館長(右)にAEDの利用状況等を尋ねる子籠さん

「ゼロ予算」は子籠さんが記者時代から「おカネがなくてもできることがある」と温めてきた構想だった。その底流にあるのが、議会を取材して感じた疑問だ。

「一般的に議員は行政に問いはするが、ソリューションを持ち合わせていないことが多い」。議会は、首長との二元代表制ではあるものの、どちらかといえば、執行役である行政側の監査役として成り立ってきた。しかし、2000年に地方分権一括法が施行されるなど、国から移された権限が増えていく中で、子籠さんは「議員も予算案や条例案の修正で“提案”はできる。議員も提案型に変わらざるをえない」と強調する。

もうひとつ、ゼロ予算にこだわる理由が人口減少社会の到来だ。豊かな自然に囲まれたベッドタウンへの流入が続いてきたあきる野も、2年前(約8万2000人)をピークに減少に転じている。「都心から1時間ほどの郊外で持ち家率が高いのが特徴。その分、その人たちが将来リタイアすると、市の税収が一段と落ちたときのダメージが大きい」と危機感を募らせる。「将来、行政におカネがなくなる時代がくる。いかに予算をかけずにおカネを引っ張ってくるか」。

2年前には、近隣自治体と同日だった職員採用試験の期日変更や、職員説明会の開催を提案し、市に採用された。その結果、試験倍率は上昇し、企画政策などの中枢部門でキャリアをスタートする優秀な人材を獲得できたという。「もはや、役所は殿さま商売ではダメ。(民間より)給料が高くなくても、厳しい時代にやりがいを見いだすエネルギッシュな人材を集めなければ」。子籠さんは議員の立場から10年後、20年後の生き残り策を提案するため、つねに模索し続けている。

高島平団地は「姥捨て山」ではない

「住民が“会いに行ける政治家”を心掛けている」と聞き役に徹する東京・板橋区議の中妻さん。

「その記事を見たとき、『ふざけるな』と思いましたよ」。東京・板橋区議の中妻穣太さん(民主党)は今年8月、朝日新聞が一面で掲載した「東京、そこにある老い」という記事に激怒した。タワーマンションの建設ラッシュが進み、近年、人口が急増する豊洲地区の世代別人口の構成などから、30年後、著しい高齢化に直面すると指摘。豊洲の“将来像”として地元の高島平団地が名指しされたのだ。

記事で取り上げられた高島平団地の様子はこんな感じだ。団地の狭い通路で、84歳女性が乗った車いすの病院通いを、76歳の自治会役員が手伝う。団地内の異臭をきっかけに、72歳の男性の孤独死が発見される――。「書かれていることは事実だが、高島平がまるで『姥捨て山』扱いされているのは一面的だ。高島平は決して限界集落ではないし、地域の問題をそこで終わりにしてはいけない」。

中妻さんがそう語るのは、自身が生活者としての自負があるからだ。IT関係の会社員だった15年前に高島平に移住。かつて日本住宅公団(現・都市再生機構=UR)が開発し、東京の人口増を支える中間層の人気を博した「東洋一の巨大団地」も施設が老朽化し、街の将来に不安が漂っていた。中妻さんが2011年、会社員を辞めて区議選に出馬したひとつの理由も「地域で何とかしなければというモヤモヤがあったから」だ。

そんな中妻さんが企画したのが「まちかいぎ」と銘打った住民会議だ。区が2015年3月までに、高島平の再生のあり方を呈示する「高島平グランドデザイン」の素案を完成させるのに合わせ、住民の意見を集約し、区政に反映させようと9月に開催した。団地を知り尽くす、タウン紙の編集長らを招いたパネルディスカッションを行い、さらにテーマごとに4つの分科会を設置。廃校になった小学校跡地の活用策等を住民間で論じた。

次ページ「住民力」を高めて課題に取り組む
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