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「中国通貨危機説に異議あり!」 元日銀北京事務所長が語る

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その時々の市場の思惑もあり、一方向に流れやすい中国への見方。中国経済の専門家が人民元不安の「通説」への異論を展開する。

つゆぐち・ようすけ●1980年東京大学法学部卒、日本銀行入行。在中国大使館経済部書記官、日本銀行香港事務所次長、日本銀行初代北京事務所長などを経て、2011年4月から現職。著書に『中国経済のマクロ分析』(共著)など。(撮影:梅谷秀司)

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最近、中国人民元への通貨アタックや大幅な人民元安を予想する有識者が増えているが、基本的な部分で事実を誤認していることが少なくない。ここでは等身大の議論ができるように問題提起したい。

中国当局はこれまでアジア通貨危機などを間近に見て、そうした「市場の暴力」からいかに身を守るかを考え、防備体制を整えてきている。

投機家は手も足も出ない人民元のオンショア市場

具体的には中国国内(オンショア)の為替市場を政府は自由にコントロールできる。自由な相対取引が世界の常識だが、中国のオンショアでは上海取引所でのみ取引が可能。さらに対ドルについては中国人民銀行が毎朝基準値を公表して、その上下2%の値動きの幅でしか取引できない。オンショアと海外との間には資本移動規制があり、通貨アタックはさほど怖くない(図1の上)。

[図1]
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仮に香港などのオフショア市場で通貨アタックが起きたらどうなるか。中国当局は昨年8月と今年1月にオフショア市場へ大規模介入し、下がりすぎたオフショアの対ドルレートをオンショアの基準値に近づけようとした。しょせん人民元はオンショアからしか供給されないから、金利が急騰し、人民元を買ったり借りたりしてアタックを仕掛けた投機家は退散を余儀なくされた。

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