官営事業の民営化の中で、郵政問題ほど紆余曲折を経たケースは存在しない。旧日本電信電話公社、旧国鉄はそれぞれ民営化の過程でさまざまな困難に直面したことは間違いないが、郵政民営化ほどではなかった。その背景にあるのは、政治の不安定化にほかならない。
郵政問題以前の民営化は、戦後55年体制の下、盤石だった自民党政権が手掛けた。しかし、郵政民営化は55年体制が終焉を迎える中で具体化した。いわば、政治の再編成の流れとともにあったといっていい。だが、政治の再編成が一朝一夕には進まなかったことが、郵政民営化にそのまま影を落とした。
たとえば、民営化を推し進めた当時の小泉純一郎首相は、郵政民営化法をめぐり党内に反対勢力(造反議員)を作り出し、2005年8月、突如、衆議院解散・選挙へ踏み切った。俗にいう郵政解散である。小泉政権は同選挙で大勝利を収め、一挙に郵政民営化を推し進めた。
だが、09年に政権を奪取した民主党・国民新党の新政権は事実上、郵政民営化を凍結。そのうえで、12年4月に改正郵政民営化法を成立させた。今、足元で進展している民営化の作業は同法に基づくものであり、当初、小泉政権が描き出したデザインとは要所要所で異なっている。
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