成長シナリオを描くうえで他社との提携は重要な選択肢の1つである。しかも上場後は、提携効果を投資家にわかりやすく説明する必要が生じる。
古くは日本通運、ローソン、最近では佐川急便、楽天、米アップル、米IBM、野村証券、三井住友信託銀行……日本郵政の100%子会社である日本郵便はさまざまな会社と提携を繰り返してきた。
その中でも最も効果のわかりにくいのが、直販専門の投資信託運用会社・セゾン投信への出資に違いない。昨年10月、日本郵便はセゾン投信と資本提携。8億円でセゾン投信の株4割を取得した。
「それでは投信王子に登場していただきましょう!」。そう促されるとセゾン投信の中野晴啓社長は照れくさそうに登壇し、「今、紹介してくれたのは、日本郵便でめちゃめちゃ偉い人なのですよ」と控えめに聴衆に語り始める。
東京都心で今年初の猛暑日となった7月26日。日曜日の昼下がりというのに、東京・八王子市にある八王子南郵便局に、中野社長の話を聞くため多くの人が集まった。200人ほどはいるだろうか。ほかの投資セミナーでは見掛けない、儲け話にむとんちゃくそうな人ばかりだ。超長期投資を推奨するセゾン投信にとっては、のどから手が出るおいしい顧客層に違いない。
東京・丸の内、川崎・麻生、東京・本郷に続いて、これが郵便局で4回目のセミナーである。中野社長は「セゾン投信の特徴は徹底した長期・国際分散投資、そして直販。創業以来8年間、どこにも売ってもらったことがない。毎月一定額の投信積み立てをしている人が多い」と説明する。販売手数料は無料(いわゆるノーロード)。預けた資産の一定割合にかかる信託報酬も年0.7~1.5%と低い。
見えない日本郵便のメリット
郵便局ではすでに多数の投信を扱っている(写真1)。が、全国ネットワークを有しながら、販売実績は1兆円にも満たない。セゾン投信は今後も直販を続けるため投信窓口販売の実績に貢献しない。
提携前、日本郵便は中野社長のセミナーにスタッフ(デューデリ部隊)を何人も送り込んで覆面調査を行った。セミナー後の懇親会まで参加し、中野社長の言葉に偽りはないか徹底的に検証した。最終的には日本郵便の高橋亨社長がセゾン投信にほれ込んで、出資を決めた。
「セゾン投信との提携を機に日本郵便の社風を変えたい」。日本郵便のある幹部は提携の目的をそう語っている。「超長期を見据えた組織にしたい、そのきっかけにしたい」というのが本音のようだ。ただ、提携効果の説明としてはどうにもわかりにくい。上場後は、投資経験の浅い個人投資家にもわかるような明快な説明が求められる。






















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