世界経済の流れに大きな変化が生じている。グローバル化とデジタル化が高まった結果、自国に加えて外国の法律制度や税法に事業構造を適合させようとする企業が増えている。
デジタル経済における技術的進歩のおかげで、企業は現地に物理的な拠点を築かなくても、市場を開拓できるようになった。それと同時に、収入源の移動可能性が高まった。つまり、租税負担の観点から、容易に「最適化」し国外へ移転することができる無形資産や足の速い投資所得が、重要性を増している。
課税立法は追いついていない
課税立法が、この展開に追いついていない。現在の税金配分原則は、国際的な取引といえば主として国境を越えて隣国にモノを輸送することを意味した時代にまでさかのぼる。しかしこの目的で1920~30年代に考案されたルールは、もはや適さなくなっている。
有効なルールを欠いた状況の下で、国家は必要な税収を確保し損なっている。それと同時に、公平な課税という課題が、ますます差し迫っている。これは、公共財や公共サービスの財源に充てる資金を賄うのに応分の貢献をする納税者の数が、減少傾向にあるからだ。
国家の財政支配権と今日のビジネス活動のボーダーレス化との間に、緊張が生じている。この緊張に対処するには、国際的な協議を通して、統一国際基準を策定するしかない。かつてEU(欧州連合)では、多国間の課題について、一部の国々による共同の解決策の推進を容認し、成功したことがある。
このアプローチは、グローバルガバナンスに応用できる。今日の世界では、大国ですら国際的な枠組みを単独で策定・実施できない。しかし数カ国がまとまれば可能なことが金融市場の規制で実証済みだ。デジタル経済を規制する枠組みに関しても、明らかになり始めている。さらに、課税の分野で確認されつつある。
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