IBM「シェフ・ワトソン」は何がスゴイのか 最強レシピが示す、「コンピュータの未来像」

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知識データベースとして組み込まれているレシピ集や、そのレシピの意図、あるいは感想といった自然言語のデータをシェフ・ワトソンは理解するようプログラムされており、キーワードから連想される”新しい”料理のレシピを作る。

このようなコンピュータの使い方をコグニティブ(認知的)コンピューティングとIBMは名付けているが、その仕組みついて紹介する前に、実際にシェフ・ワトソンが提案した料理を紹介しておこう。

・食前酒「リラックス」

食前酒のレシピとして生江シェフが入力したキーワードは「みかん」「パンチ」「休日」だ。食事前にリラックスした気分を与えるとともに、冬という季節感を引き出すためのキーワード設定だったとのこと。

実際の味はというと、トロピカルな雰囲気の中にも、ほんのりとした暖かみを感じさせる味。”パンチ”なので大きなアレンジはないが、その日の仕事を終えて楽しむ際に休まる味だったとお伝えしておきたい。

・前菜「冬の街で凍った体を」

前菜に使ったキーワードは「蟹」「スープ」「フランス風」。最後の”フランス風”は(後述するが)シェフ・ワトソンの経験値が、特にアメリカ料理に対して高く頻繁に薦めやすい傾向があると感じた生江シェフが、ここはフレンチレストランだからと入れたもの。他のプレートでも使われている。

ほぐした蟹に対して、ヘイゼルナッツをベースにチキン、ミルク、バター、コニャックを加えたスープを、タイム、イタリアンパセリ、マジョラム、ローズマリーなどで風味で整え、きしめんのようにカットされた大根が添えられている。

蟹は体を冷やす食材と言われているが、ナッツをベースにしたスープは優しさを感じさせる。個人的にはヘイゼルナッツの風味と蟹の取り合わせが新鮮で、なるほどこれも合うのかと唸ったひと皿。

・蕪料理「君の蕪」

「蕪」「ソテー」「フランス風」がキーワード。蕪を題材となっているのは、生江シェフのスペシャリテが蕪料理だからだ。僕(生江シェフ)の蕪料理はこうだけど、君(シェフ・ワトソン)の蕪はどう?と尋ねるつもりでキーワード設定した結果生まれた料理ということだ。

生江シェフの得意素材をシェフ・ワトソンがどう料理するかが注目だったが、ボイルした蕪の両面を焼いて焦げ目を付け、バルサミコ酢ベースのソースが添えられていた。さらにレタス、インゲン豆、キノコといった意外な取り合わせをバター、ニンニク、それにスパイシーなスモークパプリカを合わせていた。

これを生江シェフは写真の通りに調理したが、イベント後に話を伺ってみたところ「シェフ・ワトソンはもしかすると、レタスで素材を包ませたかったのかな?そういうところを想像するのもおもしろい。インゲン豆は自分では絶対に使わない素材なので、やっていて楽しい。良い意味で自分の持つ固定観念を崩してくれた」とコメントしていた。

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