IBM「シェフ・ワトソン」は何がスゴイのか

最強レシピが示す、「コンピュータの未来像」

導き出される結果は、新しく創造されたものであり、そのために状況を認知する必要があるため「認知的(コグニティブ)」なコンピューティングと名付けられた。

このシェフ・ワトソン。元になっているのは4年前にデビューした”ワトソン”だ。ワトソンは、著名な米クイズ番組「ジョパディ!」のグランドチャンピオン二人とクイズで対決して勝利し、注目を浴びた。

ジョパディ!の特徴は、クイズの設問と答えが逆になっていること。たとえば、「赤くて甘い野菜で、砂糖とともに煮詰めて保存食としても使われるもの」という問題に対して「イチゴとは何ですか?」と答えるクイズだ。

ワトソンはWikipediaの内容を知識データベースとして組み込み、さらに過去問題の傾向を学習した上で、かつてのジョパディ!チャンピオンと練習を積むことで、より確からしい答えをごく短時間で導き出せるようになったという。

シェフ・ワトソンはこの末裔であり、商品やサービスの問題解決を図る顧客サポートの支援といった用途から、創薬…すなわち、より高い効果が得られる薬の分子配列を考えるといった明確な答えの存在しない問題にまで取り組む、ワトソンの発展バージョンの一つとして開発された。

ワトソンはその後、いくつかのバージョンが作られ、様々な分野で活躍している。顧客の抱える問題に対応する答えを探す業務をサポートするため、顧客サポート部門の支援システムとして導入されたり、新薬開発のためにより高い治癒効果が期待できる分子配列を提案するといった創薬システムなどである。

人間の可能性を広げるシェフ・ワトソン

シェフ・ワトソンには9000以上のレシピが、初期の知識データベースとして組み込まれていると書いた。このレシピは「ボナペティ」という米料理雑誌がウェブサイトに公開しているものである。

このレシピに掲載されている材料(成分レベルにまで掘り下げて登録されている)や調理方法、調理の意図や各素材の持つイメージなどが、レシピを解説するメモなどから分類、整理されており、この成分の材料ならば、こんな調理方法でこんな料理になるのではないか?との仮説を立てて、より良いレシピを模索する。

このため、シェフ・ワトソンに与える知識データベースによって、導き出されるレシピは大きく違ったものになってしまう。たとえば、生江シェフがキーワードとして「フランス風」と入れたように、シェフ・ワトソンは”アメリカ料理を勧めがち”だ。さらに、家庭でも調理しやすいレシピになっているため、一流レストランには似合わない簡単にできすぎてしまう料理が多いと生江シェフは話していた。

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