過小評価は禁物、「長野県北部地震」の衝撃度 名古屋大学の鈴木康弘教授に聞く

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主要活断層の評価結果(2014年1月15日現在)
出典元:地震調査研究推進本部事務局(文部科学省研究開発局地震・防災研究課)(画像をクリックするとサイトへジャンプします)

過去の南海トラフ地震でも、たとえば安政東海地震(1854年)の半年前には、三重県の木津川断層帯が動いて伊賀上野地震を引き起こすなど、海溝型の本震が来る前に内陸の地震や噴火が頻発していた。防災上の結論は、やるべき備えを、いつでもしっかりやっておくことだ。

――原発の安全性評価への影響は?

鈴木康弘(すずき・やすひろ) 1961年、愛知県岡崎市生まれ。東京大学大学院理学系研究科地理学専攻博士課程修了(理学博士)。専門は活断層、変動地形学。2004年から名古屋大学の教授に。東日本大震災後は原子力規制委員会の外部有識者として敦賀原発などの活断層調査にも携わる。近著に『原発と活断層-「想定外」は許されない』(岩波書店)。

私が原子力規制庁の調査にかかわった福井県の敦賀原発も、敷地内に浦底断層という大規模な活断層を抱える。

70キロ以上の長さを持つ大規模な断層だが、全体が活動する大地震がまれに起きるという想定でいいかどうか、見直しが迫られることになる。断層の動きには不確実性があることを、今回の地震はあらためて見せつけた。原発の安全性評価においても、こうした不確実性を掛け合わせて考え直さなければならない。

今回、断層がずれた場所は、事前に作られて公表されていた活断層地図に示されていた。しかし、住民は「こんなところに活断層があったんだ」とため息を漏らしている。自治体は、住民にとって重要な情報をしっかり伝える努力が求められる。一方、細かく見ると、その活断層図も完璧だったとは言えない。今回の地震は多くの問題を投げ掛けている。とにかく、地震をわかった気になってはいけないということだろう。

被災地はもう雪が降り始めた。被災者の苦労を見ると、阪神以降のこの20年間、何をやってきたのかという無力感もあるが、今後も他大学の研究者と連携して調査を進める。国も地震本部が中心となって積極的に情報を集約して、次の備えに生かしていくことを期待したい。

関口 威人 ジャーナリスト

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せきぐち たけと / Taketo Sekiguchi

中日新聞記者を経て2008年からフリー。名古屋を拠点に地方の目線で環境、防災、科学技術などの諸問題を追い掛けるジャーナリスト。1973年横浜市生まれ、早稲田大学大学院理工学研究科修了。

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