「中国への嫌悪感」が台湾民進党圧勝の背景 台湾学生運動のリーダー・林飛帆氏に聞く

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それでも、われわれ学生も民進党が今回多くの選挙区で勝利したことを肯定的に受け止めています。これまで民進党は選挙戦に多くの注意を払い、自らが優勢な地域を熱心に歩き、また決定的な失敗(突然のスキャンダルや否定的な動きなど)もなかったようです。

民進党を云々する前に、台湾全体に与党・国民党への不信感が広がっています。馬英九政権が強力に推進している両岸サービス貿易協定、それこそ中国側に立つものであり、多くの人がこのような政策に不満を持っています。この不信感、不満が、間接的であれ直接的であれ、選挙結果に影響を与えたと思います。

――3月の学生運動が成功したことが、有権者に「今回の選挙に参加しよう」と喚起させたと考えますか。

3月の学生運動の影響は確実にあると思います。ただ、私が運動で果たしてきた役割からみて、今回の選挙結果について分析するのはちょっと適当ではないと考えます。多くの立候補者と選挙関係者、そして社会運動に参加する人たちすべてが選挙運動に心血を注ぎました。運動の幹部として、今回の学生運動が今回の選挙結果を直接的につくりあげたと述べることは望ましくないと考えるためです。

勢いに乗る民進党をどう監視するか

いま考えているのは、「青色(国民党)より緑色(民進党)がより大きくなった」という新たな政治局面について、どう対応すべきかが焦眉の課題だと思います。今後、各地域で民進党が安定的に政治を担い、これから1年間の政治革新アジェンダをどう推進するか、これはわれわれがすぐに議論すべき問題だと考えます。

――学生運動のリーダーとして、どのような政治、社会状況になることを望んでいますか。

民進党にどう対応し監督するか、そして民進党に一歩進んで提案と批判を提出することが、いま最も重要なことだと考えています。われわれがどれだけのことをできるか、まさにこの市民社会の自主性を高めることができるのかが課題です。

われわれが結局、国民党や民進党固有のイデオロギーに束縛されたり、あるいはこの市民社会が真の自主性、主体性を見せることができるのか。大事なのは、われわれが民進党にどのような批判をできるのかということでしょう。

2015年の2月までに実施される立法院(国会)補欠選挙があり、同年末には立法院選挙、そして2016年には総統選挙があります。地方選挙の後に中央政府が権力を再分配する過程で、民進党にとっても市民社会にとっても、改革するためのよい機会になるでしょう。

私自身も、次にわれわれがどのような政治アジェンダを提案できるかということを考えています。汎野党勢力がすでに馬英九政権より力をつけたこの時期に、より強い影響をどう与えることができるか。それには3つのイシューがあります。

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