「中国への嫌悪感」が台湾民進党圧勝の背景 台湾学生運動のリーダー・林飛帆氏に聞く

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まずは憲法改正を要求すること、そして選挙制度の改革について議論すべきこと、最後に国民投票法を改正すること、です。

この次に議論すべきことは、両岸関係です。われわれは、民進党と台湾団結連盟など野党の院内代表と会った際、二つの提案を申し上げました。

一つは両岸協議監督条例です。行政院が提出したものは撤回させ、再度検討して改めて提出すべきだと主張しました。なぜなら、現在の行政院案は統一選挙に惨敗した責任をとって辞任した江宜樺・前行政院長(首相)の考えであるためです。すでに彼は辞任し、行政院案はこれ以上議論すべきではないと考えています。だからこそ、いったん撤回し、再度審議せよと主張しました。

もう一つは、この両岸協議監督条例の立法化の時期についてです(この条例が成立するまで、台湾と中国との毛自由貿易協定のうち、サービス貿易協定に関する協議は立法院では行わないとするもの。今後、大陸との協議は立法院での協議を最優先することを取り決める条例)。

同条例の立法化には、われわれも賛成し、支持します。しかし、立法化する時期はとても重要だと考えています。今、内閣は過渡期にあり、新たな内閣が就任した直後に政策を調整したり変更したりするものです。国民党は今でも国会では多数を占めています。とはいえ、地方レベルでは市民らはすでに国民党を全面的に否定しました。ですから、国民党がこの条例を審議するするのはいけないと考えています。

大陸の香港への態度は、台湾の不信感を増す

われわれは、新たな立法委員の推薦手続きが終えた後に審査せよと要求しました。つまり、権力が揺らいでいたり、真空状態にある時に、馬英九総統が管理する立法委員が審査の主導権を掌握するのはいけない。次の任期を迎える立法委員候補の推薦手続き(2015年4〜6月)が終わった後、立法委員選挙の前に審査を推進しようと考えています。

――江宜樺行政院長をはじめ内閣が辞職したことについてどう考えますか。

江宜樺院長はその前から辞任すべきでした。今回の選挙結果が理由ではなく、今年の学生運動で彼が警察力を持って学生運動を鎮圧した政治責任を負うべきでした。

今になって辞任したことは、国民の期待、希望とは合っていません。また、辞任時期がとても遅かったから、国民党がこのような惨敗を負ってしまったのです。学生運動当時、すぐさま決定し、江宜樺院長を辞任させ、馬英九総統が政治責任をとって政策をちょっと調整していたならば、国民党は今のような状況に追いやられることはなかったでしょう。また、江宜樺院長が選挙敗北の責任をとって辞めたことは、「おれは悪くないが」と言い訳しながら辞めたような行動です。

――選挙後の両岸関係について、どう見ていますか。

現在の台湾は完全に新たな局面に入ったと、北京当局ははっきりと理解していると思います。対台湾政策では、大陸は今後も統一戦線方式で行い、台湾地方と政治、経済ネットワークに浸透しようとしていることは台湾国民もすでに知っており、また無駄なことだと思います。

中国政府は台湾に対し、台湾に友好的な政策を提案しなかったり、国際社会で台湾がもっと活動できるような空間を与えなければ自業自得になるだけだと思います。なぜなら、中国政府が考えたように統一の効果を与えることができず、そんな行動には台湾国民はかえって嫌悪感を感じるだけだからです。

そして、香港に対する中国政府の態度も、台湾国民にとっては、より高い自主性と独立性への希望を呼び起こすだけです。中国が香港市民を鎮圧する手法をとり、これまで香港で発生したことを見ると、独裁政権である中国は、台湾にはますます接近したくない対象として写ります。中国であれ政治であれ、経済レベルでの往来はこれ以上したくないと思うでしょう。

今後、われわれと中国の民間社会との往来が続くでしょう。経済レベルの往来、今はサービス貿易協定と品目貿易協定を結ばなくても、台湾と中国は少なくともWTO(世界貿易機関)で多くの貿易品目を非課税にした状態であり、台湾と中国とは一定の経済的交流の基礎があります。今後、これをどうすべきかは台湾の民心はすでによくわかっていると思います。中国の態度もどうなるか注目すべきでしょう。

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