“戦う哲学者”はなぜ「哲学塾」を作ったか

自分のための、ホンモノの哲学ができる場所

こうして悶々としていたころ(いまからちょうど20年ほど前ですが)、幸いにも「哲学ブーム」という名のいかがわしいブームが列島を襲い、私の哲学入門者(『哲学の教科書』)も燃え上がるように(?)売れました。そこで、カント屋から哲学入門屋に早変わり、それが次第に人生相談屋にもなり、またまた「これではいけない」と思いつつ、とにかく天上天下唯我独尊、印税だけで生きていこうと決意しましたが、大学を辞めることがなかなか許されない。そうしているうちに、還暦を迎えてしまったというわけです。

そして、電通大に移って14年後、やっと念願の自由を獲得した。同時に「野垂れ死にする」自由も獲得した次第です。本当に「もうじき死んでしまう」のだから、これからは何事にもさまたげられずに、「死」のみを扱って生きよう、だが、そのころは私の本も以前より売れなくなり、印税だけではやはり不安だと思い立ち、「死を解決する」ための資金源として「哲学塾」を始めた次第です。

「大哲学センター」ができてしまった

まあ公式的にはこうなります。しかし、そこに予期しないほどの人が来るようになって、今度は塾のことで頭がいっぱいになる。非常勤講師を10人も雇って、大学以外で「ホンモノの哲学を学ぶことができる」わが国唯一のセンターにしようなどというフトドキな野心が芽生えてくる。ホームページにあるとおり、そんじょそこらの大学では太刀打ちできないほどの(ギリシャ語、ラテン語、ドイツ語、フランス語、を含む)20科目以上がひしめく大哲学センター(?)になったのです。

ということで、またまた副業が本業になりつつある。本業は「死を考えること」であるのに。というわけで、これからは哲学塾をもっと縮小して、「死を考えること」に専念しようと思います。

今回は、私が哲学研究者としてスタートしてから哲学塾の成立に至るまでの経過(約28年間)をざっと語りましたが、次回以降は、哲学塾には実際どのような人々が参加し、そこで具体的に何をしているのかをご紹介していきます。

ほかにも、これまで1冊の哲学書も読んでこなかった者でも参加できるのか、頭が非常に悪い者でも参加できるのか、参加できてもさっぱり理解できないときはどうしたらいいのか、その後、大学院に進んだり哲学書を書いたりして、哲学で生活できるのか、そこで「友」(「哲友」?)を得ることができるのか、はたして哲学書を読むことによって「救われる」のか、自殺したい気持ちを変えられるのか、他人が怖い気持ちを変えられるのか……等々ひしめく問いに対して、少し踏み込んで「哲学塾」の実態を語ろうと思います。
 

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