不妊治療のお金「保険適用」でどう変化?実例検証 自己負担は原則3割、「高額療養費制度」も利用可

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2021年時点では不妊治療は自費診療なので、患者の自己負担は10割。したがって治療にかかった総額の約73万円をAさんが支払う必要があった。

Aさんは、採卵後に受精卵を一度凍結してから移植する「凍結胚移植」という方法を選択した。ちなみに、日本の体外受精などの約80%は、この凍結胚移植によって行われている。厚生労働省の調査によると、凍結胚移植による体外受精の平均治療金額は53.7万円だ。

さらに、体外受精では、卵巣でしっかり卵が育つよう、排卵誘発剤などによる薬物治療を行うことがある。Aさんは採卵のために薬を比較的多く用いる「高刺激法」というやり方を選択し、都心のクリニックに通っていたため、平均より高めになっている。

実質的な自己負担は昨年時点でも「4割5分」

先ほど、Aさんにかかった治療費約73万円をすべて支払う必要があるといったが、実際の負担額はそれよりも軽くなる。というのも、自治体から不妊治療に助成金が支払われるためだ。

Aさんの場合、住まいのある東京都から30万円、23区の某区から10万円の助成金が今後支給される見込みのため、実質負担額は約33万円。2021年時点でも費用負担の割合は4割5分だったことになる。

なお、2021年1月から助成金の所得制限はなくなったものの、治療開始時の年齢、治療回数などには制限があった。また、採卵や移植の回数などが多いほど費用はかさむため、自己負担割合には個人差が大きい点には留意が必要だ。

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