国の導入遅い「子の死因究明」に山梨が力入れる訳 知事はなぜ「県の重要政策」と位置づけたのか

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――子どもの命を守るには、親への支援も重要ですが、CDRのほかに子どもに関わることで取り組んでいることは何がありますか。

これはもう、全国でトップクラスを走っていると思います。知事になって、子育て支援局という独立部隊を作ったのは本当に大正解だったと思います。特色のあることをいくつかやっていますが、待機児童ゼロのセカンドステージというチャレンジをやっています。待機児童ゼロとは総数でゼロということですが、それだけじゃ意味がない。

例えば、甲府に勤めるお父さんお母さんが、県境の上野原市の保育園が空いているからといっても、そこに通園するのは無理じゃないですか。希望の園に入れないことで、潜在的な待機児童がいるんです。少なくとも自分のうちから近く、なおかつ、好きなタイミングで預けられるというのが望ましいです。

何年か前に話題になった「保育園落ちた、日本死ね」って、気持ちがよくわかりますよ。うちの家内も、保育園に子どもを入れられず、「私、仕事を辞めなくちゃいけないでしょうか」って泣いてましたもんね。衆議院議員をしていて東京にいたころです。

その後、たまたま保育園に入れましたが、区立ではなかったので、私立を渡り歩いたりして。もう、保活は大変でしたもん。そういう意味で、子育てや保育のあり方の改善が必要です。介護離職と同じように保育離職というのが起こって、貧困状態になることだってありえます。夫婦共働きでようやく家計が維持できているという家庭は相当数ありますから。

CDRの出番は本当はないほうがいい

最近では、レスパイト(休憩)ケアというのを始めました。子育てをしてるお母さんの負担を一時だけ軽減しましょうというものです。4時間おきにミルクをあげないといけないような乳幼児がいると、お母さんヘトヘトになるんですよ。一晩ホテルに行ってもらって、そこでは、お子さんを保育士が夜通しみてくれる。そして、お母さんはぐっすり寝てくださいというものです。

きっかけは、シャーリーズ・セロンっていうアメリカの女優が主演する映画『タリーと私の秘密の時間』です。夜間のベビーシッターが出てくるんです。主人公のママは子育てにエネルギーを取られて眠れない。すると、人格の分裂を起こしちゃうんです。日中は子育てに苦労するママなんだけど、夜は、別の人格として家事を完璧にやるけど、最終的には……というストーリーです。

「こういうことありうるよね。お母さんたちが休めるサービスを提供できたら役に立つに違いないね」と周囲と話をして、県としてどういうことができるか検討してもらいました。今はモデル事業の段階ですが、好評らしいです。

――親の負担軽減や息抜きは、子どもが安心して暮らせる環境作り、CDRが目指す子どもの死の予防にもつながりますね。

CDRの出番は、本当はないほうがいい。ネタがなくて困っていますというのが一番理想的な状態です。CDRからレスパイトまで効果的に取り組めるのは、子育て支援局という独立部隊を作ったからです。だから、こども家庭庁には期待しています。こういうこと言ったら怒られるかもしれませんけど、山梨県の子育て支援局ぐらいのパフォーマンスをこども家庭庁が示すことができれば、多分、日本の子育て環境はよくなると思うんです。

取材:穐吉洋子=フロントラインプレス(Fromtline Press)所属

(第4回は子の「不慮の死」防ぐ事業に制約課す厚労省のなぜ

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「誰も知らない世界を 誰もが知る世界に」を掲げる取材記者グループ(代表=高田昌幸・東京都市大学メディア情報学部教授)。2019年5月に合同会社を設立して正式に発足。調査報道や手触り感のあるルポを軸に、新しいかたちでニュースを世に送り出す。取材記者や研究者ら約40人が参加。スマートニュース社の子会社「スローニュース」による調査報道支援プログラムの第1号に選定(2019年)、東洋経済「オンラインアワード2020」の「ソーシャルインパクト賞」を受賞(2020年)。公式HP https://frontlinepress.jp

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