国の導入遅い「子の死因究明」に山梨が力入れる訳 知事はなぜ「県の重要政策」と位置づけたのか

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長崎幸太郎(ながさき・こうたろう)/1968年東京都生まれ。1991年東京大学法学部卒業後、大蔵省入省。在ロサンゼルス総領事館領事、山梨県企画部総合政策室政策参事、衆院議員を経て、2019年から現職(写真:穐吉洋子)

――「日本で最初にCDRをやりたい」と、知事に就任してすぐに山中先生に電話をかけ、CDRの体制作りを県職員に指示しましたね。

子育て支援は公約に掲げていました。CDRも、その中のやるべきメニューの1つです。法制度がないならないなりに、その範囲内でやろうと思えばできますよね?(CDRにおける検証は)専門家の間で分析するために情報が必要なのであって、プライバシーを侵害するものではない。県という横断的な組織こそ、CDRをやりやすいと思ったんです。

国会議員では無理ですね。当時は、議員立法でやったら面白いと話し合っていましたが、大変な世界です。今みたいにこども家庭庁などの話があれば別ですが。国会議員より県知事のほうが範囲は狭いけど、やろうと思えば比較的すぐに取りかかれます。警察だって、県の組織ですから協力をお願いできる。県下の産業関係にも、安全な製品作りを提案だってできる。県こそCDRをやりやすい立場です。やらない理由はないじゃないですか。

現場の実務は大変だと思います。だけど、この件に関しては反対論って起こりえないと思うんですよ。お医者さん、学校の先生、保護者のお父さんお母さん、多くの人が、こんな制度があったらいいよねと思いながらも、社会のセグメントの中で、なかなかできなかったことの代表例だと思うんですよ、CDRは。

強い意思表示が必要だと思った

――国のモデル事業に手を挙げる以前に、2019年8月の山梨県第1回検討会に出席されていますね。

言い出しっぺだし、CDRには多くの関係者が絡んでくるので、強い意思表示が必要だと思いました。『CDRは選挙で選ばれた知事としてやるべき政策だと認識しています。県の大方針ですから皆さん協力してください』と。総論は賛成でも、各論で問題は起こりうるわけじゃないですか。そこは総論を目指して知恵を出し合いましょうと呼びかけたかったんです。

――モデル事業1年目では13件の死亡例が検証されました。報告書の感想を教えてください。

もっとガツンとやってもいいんじゃないのという思いもありましたが、県内だけの事例ですし、しっかりした内容だったと思います。やっぱり、現場は慎重というか、おっかなびっくりなところはあったと思います。(検証は)個人情報の塊ですから。

それに、子どもの死亡に関する話なので、親御さんからすると、本当は『触れてくれるな』という世界なのかもしれません。心の半分では、再発防止と言えたとしても、残りの半分は『そっとしておいてほしい』と思っているかもしれない。

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