太陽電池で世界席巻、中国トリナの対日戦略 メガソーラー一巡見据えた対応強化へ

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トリナの製品。日本市場でシェア8%を狙う

ブランディングと同様に重要なのは、顧客に対する持続的な付加価値の提供だ。単に製品の付加価値だけではなく、顧客のクレーム対応を含めたアフターサービスやジャストインタイムの配送などサービスの付加価値が大事であり、それを日本の顧客が望んでいる。太陽電池パネルのライフサイクル(寿命)は約25年であり、売ったら売りっぱなしではなく、ライフサイクル全体を通したサービスを提供していく。

われわれはパネルだけでなく、インバーター(直流から交流への電力変換装置)、ラッキングシステム(架台)、ケーブルといった太陽光発電システムを構成する主要機器について、品質の認められたサプライヤーの陣容を整えている。例えば、インバーターではオムロンや田淵電気、パナソニック、シャープ、日立製作所、ABBなどの調達先がある。そのためサプライヤー間の競争も激しい。

安値攻勢が正しい戦略とは思わない

――価格戦略はどうか。中国勢は安値攻勢が得意だ。

重要なのはリーズナブル(妥当)なグロス・マージン(粗利益)であることだ。キャッシュがなければ持続的な発展はない。損をしてまで販売するようなことはしない。もちろん、顧客は安い価格を好むかもしれない。一時的にディスカウントすることはあるが、それはあくまで特別なケース。製造コストを下回るような価格で売ることはできない。

中国メーカーの中には、日本で売り上げを伸ばすために非常な廉価で販売しているところもあるが、私はそれが正しい戦略だとは思わない。あくまでも利益を上げて事業を拡大するための妥当な粗利益が重要であり、顧客の納得を得られる品質とサービス力が必要だ。製品のスポット市場価格で見ると、当社の製品はインリーや他の一部ライバルメーカーの製品よりやや高い。われわれはそれがなぜかを顧客に説明し、理解を得ていく。製造コストの競争力で他社に負けない自信がある。それは品質で妥協しない努力を続けているためだ。価格と品質は連動している。

――2015年度からはFITによる太陽光発電の買い取り価格が大幅に下がる可能性がある。太陽電池市場の価格競争も激しくなると予想される。

現状、太陽光発電の導入コストは依然として(火力など)従来型の発電コストに比べて高い。そのため、コスト低減が最終的なターゲットだ。グリッドパリティ(電力会社の電力料金単価と同等になること)の達成を目指していく。グリッドパリティに見合うように製造コストを引き下げ、同時に高い品質を保つことがわれわれの役割だと考えている。

われわれは価格競争を恐れてはいない。競争的な価格を実現するために必要なサプライヤーとの良好な関係があり、高い変換効率を生み出すR&Dの力がわれわれにはあるからだ。

――中長期的には日本でシェア10%以上が目標になる?

もちろん、さらなるシェア拡大を図る。まずは日本でわれわれのシェアを上回る海外勢(JAソーラー、カナディアン・ソーラー)を抜くことを目指す。それとともに、われわれは新たなトリナ・ソーラーの企業イメージを確立したい。長期的、永続的に日本で事業展開できるように、製品・サービスの信頼性や財務的基盤を強固にしていくことが最大の目標だ。

中村 稔 東洋経済 編集委員
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