アウディ「Q4 e-tron」業界内での期待値が高い訳 「リスク覚悟の戦略」で得たアドバンテージ
こうして3モデルを試乗して、新たに発表されたQ4 e-tronの走りの方向性が見えてきた。
Q4 e-tronは、決してアウディBEVのエントリーモデルではなく、ハイパワーなRS e-tron GTで感じた痛快さにも通じる爽快な走り味と、e-tron 50 quattro S lineで体感したSUVとしての居住性や使い勝手のよさが融合した車であるはずだ。
電動化に「一日の長」があるVWグループ
e-tronブランドの着実な進化の背景には、フォルクスワーゲングループが2016年に公開した中期経営計画「Together‐Strategy 2025」で公約した、徹底したBEVシフトがある。
フォルクスワーゲン、アウディ、ポルシェ、ランボルギーニ、ベントレー、セアト、シュコダ……と、グループが保有する多くブランドで電動化を行って量産効果を狙い、コスト削減と技術革新を推進するという、当時としてはかなり大胆な発想だった。
その頃、同グループでは、俗にディーゼルゲートと呼ばれた排ガスの不正が大きな社会問題となっていた時期だ。
そのため、トヨタなど日系メーカーはもとより、同じドイツのメルセデス・ベンツやBMWの周辺からは「フォルクスワーゲングループにとって、事業のV字回復を狙った、かなり大きなリスクのある挑戦だ」として、BEVシフトについて慎重な見方が多かった。
ところが、2010年代末から2020年代初頭にかけて、ESG投資の嵐がグローバルで吹き荒れ、自動車の電動化の流れは一気に加速した。ESG投資とは、従来の財務情報だけではなく、環境(Environment)、社会性(Social)、ガバナンス(Governance)要素も考慮した投資を指す。
こうした経済の流れを踏まえて、欧州委員会(EC)が欧州グリーンディール政策を推進し、直近では「2035年までにEU域内では事実上、新車販売はBEVまたは燃料電池車のみにする」という考えを示している。
むろん、フォルクスワーゲングループを含むドイツメーカー各社による行政機関へのさまざまなロビー活動があったと推測されるが、いずれにしても、結果的にフォルクスワーゲングループがBEVシフトで一日の長がある状況だ。
アウディe-tronのこれからの進化について、定常的に観測していきたいと思う。
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