今年の9月、日韓対抗戦でキャプテンを務めさせていただきました。「どちらに勝ち目がありますか」と記者に聞かれたとき、「日本選手の平均年齢が31歳、韓国が24歳ですから、ゴルフ経験が7年多い日本チームが有利ですよ」と、答えたんですが、平均年齢24歳という、近い将来やってくる韓国パワーに脅威を感じたのも事実です。
近い将来というよりも、先日行われた日本オープンでも韓国選手が勝つし、女子プロでも毎週のように韓国選手が上位を独占。ドラマに続いて、すでにゴルフでも韓流ブームが始まっているのかもしれません。
「韓国人は日本人と体格も変わらず、ゴルフ事情からすると日本のほうが恵まれているのに、なぜ日本は負けることが多いんでしょうか」。こう聞かれることがありますが、その質問の中に答えがあると思っているんです。
ご説明するまでもなく、韓国国内は男女とも試合数が十分ではありません。トーナメントプロを目指す、すなわちプロゴルファーを目指すことは海外の試合が仕事場になるわけです。この出発点での気構えが、やがて腕の差となって表れるんですね。
名もないときの海外での一人旅、結構堪えるものですよ。その試合の賞金が翌週の旅費やホテル代、食事代になる。仲間たちの多い国内では、予選落ちで費用がなくなったときは誰かに振り込んでもらおうか、そんな気持ちの違いが最終日、最終ホールにスコアとして出てくるんです。
韓国の選手は日本に来ても、仮にアメリカで戦うにしても、その国の風土に少しでもなじもうと一生懸命です。ゴルフって不思議な競技で、その土地に愛情を持ってなじまないと、素直に成績に表れるんです。
今もチャンピオンツアーでアメリカと日本を行ったり来たりしていますが、田舎育ちの自分はアメリカやヨーロッパの試合には苦労しました。最初は日本食しか食べられず、なんせステーキが食べられなかったんですから。数年してから、自然にステーキを食べている自分に気づき、「海外に慣れたんだ」と、一人密かによろこんだ記憶があるくらいです。
だからといって「日本人選手よ。海外から学べ」、と言っているのではありません。「目の前にある日本の試合に闘志を持って戦え」、と言いたいのです。日本の試合で外国選手に多くの賞金を持っていかれているのに、なぜ日本人選手は海外を望むんでしょうか。
宮本勝昌選手は10月末時点で122試合連続出場、ほぼ5年間試合を休んでいないわけです。すばらしい闘志ある選手だと思いませんか。好青年が多い日本のプロゴルフ界ですが、意地のある個性派選手の出現を、多くのファンが望んでいます。
1942年千葉県生まれ。64年にプロテスト合格。以来、世界4大ツアー(日米欧豪)で優勝するなど、通算85勝。国内賞金王5回。2004年日本人男性初の世界ゴルフ殿堂入り。07、08年と2年連続エージシュートを達成。現在も海外シニアツアーに参加。08年紫綬褒章受章。
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