当然のことながら、ゴルフ場にはその土地土地の個性が出ます。国が違えばなおのこと。英国仕込みの日本のゴルフ場には、格式を重んじるところが多く、芝の手入れも行き届いています。所変わってフランスなどでは、落ち葉の散り積もったゴルフ場など珍しくもありません。これはこれで美しいのですから、それでよいのだと思います。
仕事や休暇で海外に出ると、その土地でゴルフをしたくなります。フランスやイタリアには、まるで森の中のような、ひょっこり鹿でも飛び出してきそうなコースも。こんなゴルフ場で、葉っぱを踏みしめボールを探しながらプレーするのもうれしいものです。ゴルフを楽しむだけでなく、季節の空気を感じつつ風景も満喫できるのですから。
いつだったか、ヴェニスのリド島にあるゴルフ場でラウンドしたことがありました。島には古城があり、コースの中にも城壁がそのまま残っています。ボールがこの城壁を越えないと、ラウンドを続けることができません。私は幸いにもクリアしグリーンに乗せることができましたが、ビギナーだったら泣き出したくなっていたでしょう。それにしても、自然のありのままの姿を最大限に残しつつ、人間のつくった建造物も邪魔にせずにデザインされたコースは、この土地ならではの強みを上手に活かしたすばらしいゴルフ場でした。
海外のゴルフ場には、一人でラウンドできるコースも多く見受けられます。一人だと他人の組に入れられてしまう日本とは大きな違いですね。ルールや風格を重んじるあまり、個人の自由や楽しみが犠牲にされることも多い日本のコースと比べて、いつでも何人でもどうぞとでも言っているようなオープンなゴルフ場は、とてもうらやましいものです。それこそ散歩の途中でふらりと立ち寄り、孤独の空間でラウンドするのも、ときにはすてきだと思いませんか。
モロッコのマラケシュで以前、何の道具も持たず、たった一人でゴルフ場に行ったことがありました。マスター室にいた男性が、コースを知らないならキャディをしてあげる、と申し出てくれました。ほかにプレーヤーも見当たらないゴルフ場で、見知らぬ男性と二人きりになることに警戒をしつつ、職員の方だから大丈夫、と自分に言い聞かせてキャディをしていただきましたが、結果的には大正解。何しろ林の中のコースは薄暗く、標識もないため方角もわからず、一人ではどうにもなりません。こういうゴルフ場は、地元の人が庭のように楽しむコースなのかもしれません。もしも一人でラウンドしていたら、捜索隊が出てしまうところでした。
世界中のあちこちで、今日もゴルフを謳歌している人々がいます。彼らプレーヤーやゴルフ場からにじみ出る、お国柄や個性を発見することが楽しくて、海外の予定が入る度にまたゴルフのプランを練っています。
大阪・岸和田生まれ。文化服装学院在学中よりキャリアを重ね、東京、ローマ、上海、ソウルなどでコレクションを発表、2009年からは17年ぶりにパリコレクションも再開。近年は書画作品の展覧会も多数開催している。1997年第15回毎日ファッション大賞受賞、01年大阪芸術賞受賞。
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