中国の領土的野心がアジアの平和を壊す--ブラーマ・チェラニー インド政策研究センター教授


これらの軍事行為は、中国がまだ弱小で貧しく、国内が分裂していた時代に取られたものだ。現在のように国力が増大している中国が同様の行動を取れば、周辺国に懸念を呼び起こすのは当然である。

中国は、かつて“平和的な台頭”を説いていた。だが現在では、露骨に軍事力を誇示し、さまざまな局面で自国の権利を訴えている。中国共産党は自らの権力と国内秩序を維持するために軍事力への依存を強めており、軍の指導部が外交政策に対して影響力を増しつつある。その結果、領土要求も強まり、そのことが周辺の領土や領海をめぐる新しい紛争の火種になっている。

国境を書き直すのは交渉ではなく戦争

今年に入り中国は、南シナ海を“中核的利益”に含め、黄海を中国の排他的な軍事訓練地域に指定するなど、強硬的な外交政策を示している。中国の当局者は、アメリカと韓国が同海域で共同軍事演習を行うのを中止するよう求めている。

また中国はインドの北東にあるアルナーチャル・プラデーシュ州と尖閣諸島に対する領有権を執拗に主張し始めている。インドの防衛関係者は、紛争地域のヒマラヤ国境を越えて中国軍が侵入する回数が急増していると報告している。さらに最北部にあるジャム州、カシミール州およびカシミール地区におけるインドの主権にも疑問を提起し始めている。

2004年に中国外務省のウェブサイトに「高句麗王朝は中国の王朝であった」という主張が掲載されたのをきっかけに始まった、中国と韓国の争いの背景にも、将来の朝鮮半島統一をにらんで領土権を留保するという中国の狙いがあった。現在の中国と北朝鮮の国境は確定的なものではないというシグナルを送ることで、中国は国境をめぐる緊張の亡霊を呼び起こしたのである。


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