3月からFRBの金融政策はどう動いて行くのか アメリカ経済と金融政策に詳しい小野亮氏が解説

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――エネルギーの面を見ると、ロシアへの制裁によって、ロシアと欧州が打撃を受けますが、アメリカにはむしろプラスに働くと考えられますね。

エネルギーの面ではそうだろう。市場におけるOPEC(石油輸出国機構)のシェアやアメリカのシェアは高まることになる。ロシアからの輸入が減る分をそこが代替しなければ、欧州がもたないからだ。

ただし、ニッケルの問題に見られるように、これから鉱物資源の不足も広がってくる。こうしたさまざまな問題が噴出する中で、ロシアへの海外からの直接投資の規模は4000億ドルあるので、ひも付いた証券化市場にも影響を与えて金融市場にもストレスが掛かることが十分考えられる。

エネルギーではアメリカは強いが、金融市場におけるクレジット・ショックには敏感なので、2022年第1四半期についてはゼロ成長に陥るということもありうる。ただそのまま悪化していくかといえば、そうではない。底力があり、翌期には回復するという形になると思われる。

ロシアからの天然ガス停止が最大のリスク

――今もってロシアは天然ガスを欧州に供給し続けているわけですが、これが止まればたいへんなことになりますね。ドイツのショルツ首相も「代替策がない」とコメントしています。

それはかなりのリスクシナリオで、ロシアにとっても欧州にとっても1カ月ももたないという話になる。金融市場を通じてアメリカも含めた世界経済への打撃となるので、さすがにそこへ行く前に停戦協議をまとめるという方向になるだろう。

その場合はウクライナとロシアだけでなく、EU(欧州連合)も入った協議になるのではないかと思う。ミンスク合意(2014年にロシア、ウクライナに仲介役のフランス、ドイツが加わってまとめたウクライナ東部紛争を巡る和平合意)には非常に曖昧なところがあったので、仕切り直しをしないとおさまらないだろう。

大崎 明子 東洋経済 編集委員

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おおさき あきこ / Akiko Osaki

早稲田大学政治経済学部卒。1985年東洋経済新報社入社。機械、精密機器業界などを担当後、関西支社でバブルのピークと崩壊に遇い不動産市場を取材。その後、『週刊東洋経済』編集部、『オール投資』編集部、証券・保険・銀行業界の担当を経て『金融ビジネス』編集長。一橋大学大学院国際企業戦略研究科(経営法務)修士。現在は、金融市場全般と地方銀行をウォッチする一方、マクロ経済を担当。

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