「日本株はウクライナ長期化でも大底圏」と読む訳 「スタグフレーション懸念」はどの程度深刻か
ロシアのウクライナへの侵攻の可能性は、すでに当コラムでも昨年11月に指摘していたものの、ここまで世界株価を攪乱するとまでは想定できなかった。市場はウクライナ情勢そのものだけではなく、ロシアへの経済・金融面での制裁により、エネルギー価格が一段と高騰する可能性や、対ロ貿易・金融のロシアの相手側国の企業や金融機関への悪影響などを、不安視していると推察される。
「世界経済スタグフレーション懸念」は悲観的すぎる
ただ、その中でも足元最大の懸念要因となっているエネルギー価格については、国際的な指標であるWTI原油先物価格は、3月7日に一時1バレル=130ドルの大台を超え、130.50ドルの高値をつけたものの、その後は110ドル前後の推移にやや落ち着いている。
その背景としては、UAE(アラブ首長国連邦)がOPEC(石油輸出国機構)に増産を働きかけるとの報道や、OPECプラス(OPEC加盟国とその他の産油国の集まり)から要請があればイラクが増産する意向があると報じられたことがある。
また一部報道では、カナダのアルバータ州の高官が「アメリカがロシア産原油の輸入を差し止めるのであれば、カナダがアメリカ向けの増産を行う」と発言した、とも伝えられている。エネルギーの需要側でも「原発の稼働を当初計画以上に長期化しよう」という動きが欧州の一部国にあると伝えられており、世界的に省エネの機運も進むだろう。
こうしたことを踏まえると、エネルギー価格が青天井で急騰を続け、世界経済がスタグフレーション(インフレと景気後退の同時進行)に陥るとの説は、悲観的すぎると考える。
実際に市場が発するサインに目を向けてみよう。国債市場においては、長期国債利回りと中短期国債利回りが逆転する現象は「景気後退の先行指標」だといわれる。これは、債券投資家が長期的な経済展望に先んじて悲観的になるためだと解釈される。
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