「売れない・貸せない・住む予定ない」家の絶望未来 当時8000万円したのに…ニュータウンの行方

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入居時こそ新しい街として活力にあふれ、同世代で同じような境遇、経済条件をもつ住民たちで構成されてきた街も、代替わりをするための魅力を醸成できないでいるのが現実だ。

鳩山ニュータウンは2015年ですでに高齢化率が44.1%に達している。そして2040年にはこの数値は53.9%に達するという。

「売れない」「貸せない」「住む予定がない」の三重苦

そして確実に起こるのが相続である。ほぼ同じ時期に同じ年代の人々が入居してきたニュータウンにおいて、この事象の勃発は避けることができない。そして次にまとめてやってくるのが、空き家問題である。

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子どもたちの多くは自分が育ったニュータウンに興味も関心もないという。それはそうだ。彼らは子どものころからその多くが学習塾に通い、私立中学に入り、毎日父親と同様、電車に乗って通学をしてきた。できればこんな遠くから通いたくはなかったはずだ。

結局、ニュータウンは昭和世代の人たちがノスタルジーを感じてきたような「ふるさと」ではなく、いまだに親が住んでいる実家というだけのものでしかないのだ。

今後この子どもたちが苦心惨憺(さんたん)するのが、親が亡くなったあとの実家の後始末だ。新しい血が入らなくなったニュータウンにはもはや家の流動性はない。交通利便性の脆弱さゆえ家を貸したいと思っても需要が見つからない。そして自分はすでに都内にマンションを所有していて、いまさら親の実家に戻るなどありえない。「売れない」「貸せない」「自分が住む予定がない」の三重苦の負動産である。

相続して真面目に管理していても、出口が見えないのが未来のニュータウンである。先がわからない物件は、管理する者がいなくなる、管理が行き届かなくなれば廃墟が増える。廃墟が増えれば、さらに人がいなくなる。ゴーストタウンへの道である。

国は相続登記を義務づけ、所有者不明土地のこれ以上の増加に歯止めをかけようとしている。いっぽうで相続人にとって必要でない不動産については相続放棄して国が管理する方針も打ち出している。ニュータウンの多くが再び元の山林に戻っていくのが未来の姿かもしれない。

ふるさとは遠きにありて思うもの、と言ったのは昭和世代までだが、ニュータウンで育った世代には、どこを探してもふるさとの痕跡が見当たらない、脳裏に残るわずかな記憶に頼るものになるのだ。

牧野 知弘 不動産事業プロデューサー

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まきの ともひろ / Tomohiro Makino

1959年生まれ。東京大学経済学部卒。ボストンコンサルティンググループなどを経て三井不動産に勤務。J-REIT(不動産投資信託)執行役員、運用会社代表取締役を経て独立。現在はオラガ総研代表取締役としてホテルなどの不動産プロデュース業を展開。また全国渡り鳥生活倶楽部株式会社を設立。代表取締役を兼務。著書に『不動産の未来』『負動産地獄』『空き家問題』『2030年の東京』(河合雅司氏との共著)など。

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