解散総選挙、「過半維持なら続投」の落とし穴 議席減が大きければ政権運営は不安定に

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それにしてもこの度の衆院解散に「大義」はあるのか、という点が指摘され続けている。安倍首相は消費税について「今年4月に続き来年10月に引き上げれば、個人消費を抑えデフレ脱却を危うくすると判断した」と述べたが、野党の考えも、これと大差ない。また安倍首相は「国民生活に大きな影響を与える税制で重大な決意をした以上、国民の声を聞かなければならない」と述べたが、これは与野党間の争点にならない。争点なき選挙にどうやって国民は意思を示せばいいのだろうか。

とはいえ、一応の争点になりそうなのは、安倍首相が「景気条項を撤廃し、2017年4月から必ず消費税10%に引き上げる」と宣言した点である。この点については、野党側が「景気条項を維持する」と宣言すれば争点になるだろう。

安倍首相は、これによって「2017年まで続投する」という意思表示もしたことになる。事実上の長期政権宣言をしたと見ていいだろう。

ただ会見での発言には波紋を呼ぶようなものがあった。「与党で過半数を維持できなければ退陣する」と述べた点だ。

87議席減らしても退陣しない?

昨年6月に公職選挙法が改正されたため、次期衆院選から衆院定数は475になる。その過半数は238になるが、自民党と連立を組む公明党の議席数(現有議席31)が変わらないとするならば、自民党は207議席以上を獲得すれば過半数を維持できるということになる。自民党の現有議席は294だから、次期衆院選で87議席も減らしてもいいということになってしまうのだ。これには海江田万里民主党代表も、「与党の総大将がありえない」と呆れ返っていた。

ただし、実際に自民党がここまで議席数を減らすことはありえないだろう。時事通信が11月7日から10日に実施した世論調査によると、自民党への支持率は22.3%で、第2次安倍内閣が発足して以来最低を記録したものの、民主党4.8%、共産党1.8%、維新の党0.8%などをはるかに上回っている。このまま自民党への支持率が下落したとしても、今後1カ月で民主党と逆転することはまずありえないほどの差だ。

そうであっても議席減を最低限に抑えない限り、与党内に不協和音が広がり、安定的な政権運営は難しくなる。そんなリスクを冒してでも選挙に打って出るということは、安倍首相は、現時点で野党側に力がないことを確信している、ということだ。おそらく、その確信のとおりであろう。「大義」がなくても「大敗」することはまずない、という不可思議な選挙戦が始まろうとしている。

安積 明子 ジャーナリスト

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あづみ あきこ / Akiko Azumi

兵庫県生まれ。慶應義塾大学経済学部卒。1994年国会議員政策担当秘書資格試験合格。参院議員の政策担当秘書として勤務の後、各媒体でコラムを執筆し、テレビ・ラジオで政治についても解説。取材の対象は自公から共産党まで幅広く、フリーランスにも開放されている金曜日午後の官房長官会見には必ず参加する。2016年に『野党共闘(泣)。』、2017年12月には『"小池"にはまって、さあ大変!「希望の党」の凋落と突然の代表辞任』(以上ワニブックスPLUS新書)を上梓。

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