金の価格が1万ドル/オンスを超える日は来るか--ケネス・ロゴフ ハーバード大学教授
金の価値について理性的な会話をするのは容易ではない。この10年間に金価格が3倍以上も上昇したこともあり、今まで以上に冷静な議論をするのが難しくなっている。昨年の12月、新聞のコラムで、マーティン・フェルドシュタイン・ハーバード大学教授やヌリエル・ルービニ・ニューヨーク大学教授らの経済学者が金相場の強気の見通しを批判し、金投資のリスクを指摘していた。
しかし、その後も金価格はさらに高騰。最近ついに、金価格は1オンス当たり1300ドルの過去最高値を記録した。昨年の12月、多くの金投資家は、金価格は間違いなく2000ドルまで上昇すると主張していたが、現在では2000ドルを超えると予想する投資家もいる。
知人の投資家が、「ダウ工業株価は1980年代初めに1000ドルの大台に乗る前の10年間は低迷していたが、その後、上昇して1万ドルの大台を超えた」と話していた。その例から言えば、現在1000ドルの大台を超えた金価格が、今後10倍上昇する可能性はゼロではない。
金価格のさらなる上昇は空想とは言い切れない。物価調整後の金価格で見ると、現在の価格は80年1月の史上最高値に程遠い水準にとどまっている。当時、金価格は850ドルだったが、これは現在のドル価値で計ると2000ドルをはるかに超える水準になる。ただ80年1月は政治不安が高まっていた期間で、この金価格は異常な高値であった。現在の1300ドルの価格は、長期的な物価上昇調整後の金の平均価格より倍以上も高い。とすれば、金価格のこれ以上の大幅な上昇を正当化できるのだろうか。