金の価格が1万ドル/オンスを超える日は来るか--ケネス・ロゴフ ハーバード大学教授

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現在の金の高価格を支えてきたもう一つの極めて重要かつ基本的な要因は、もっと一時的なものかもしれない。それは、最近の金利動向だ。金価格は世界の金利動向に極めて敏感である。金を保有していても利息は稼げないし、貯蔵する費用もかかる。現在、各国の金利はゼロに近く、債券に代わって金に投機する費用は相対的に安くなっている。しかしながら、実質金利が大幅に上昇する事態になれば、金価格は暴落するだろう。

多くの研究によれば、短期から中期の金価格の動向を予測することは極めて困難である。儲ける確率と損をする確率はほぼ拮抗している。したがって、短期の金価格の動向を長期の動向に当てはめて考えるのは危険だ。金価格は大幅に上昇しているが、数年前には、住宅価格も同じように暴騰していた。

裕福な投資家やソブリンファンド、あるいは中央銀行なら、極端な事態に備えてポートフォリオのほんの一部を金で保有することはまったく理にかなっている。ただし、金価格の上昇で金の魅力が高まっているとはいえ、大半の人にとって金投資は非常にリスクが高い。

もちろん、理性的に考えたからといって、金の価格にほとんど影響はないかもしれない。ただ、昔の錬金術師に言えたことは、現在も言える。すなわち「金と理性を調和させるのは困難」なのである。

(週刊東洋経済2010年11月13日号)

※記事は週刊東洋経済執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。

Kenneth Rogoff
1953年生まれ。80年マサチューセッツ工科大学で経済学博士号を取得。99年よりハーバード大学経済学部教授。国際金融分野の権威。2001~03年までIMFの経済担当顧問兼調査局長を務めた。チェスの天才としても名を馳せる。


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