10代の子どもが「市販薬の乱用」に走る怖い実態 精神科医が語る「若者たちの危機」

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最後に、「大丈夫」ということについて、すこしお話したいと思います。親が大丈夫というサインを出すことは、子どもの安心につながる大切なことです。なぜなら、親が大丈夫と思っていないときのオーラというものは、子どもにビンビン伝わっていますし、それによって子どもはさらに追いつめられてしまうことがあるからです。ですから、まずは親自身が大丈夫と思えるようになることがとても重要です。ただ、根拠なしに大丈夫なんて思えませんし、わが子のこととなると、やっぱり難しいですよね。

まずは親がいろんな人たちと出会う

では、どうすればよいかと言うと、不登校経験者やかつて不登校の子どもの親だった方の話を聞く、これが大事だと思います。「不登校その後にもいろいろある」という話を聞くことで、親も安心できます。そして、その安心が子どもに伝わることで、よい循環につながっていきます。不登校経験者と出会って話を聞いたり、不登校の親の会などに参加してさまざまな方の話を聞くことをおすすめします。

親御さんのなかには、わが子をどこかに通わせようとしたり、なんとかして他者との出会いをつくろうとされる方もいますが、親から一方的に促されて見つけた居場所や人間関係ほど意味のないものはありません。

当記事は不登校新聞の提供記事です

まずは、親がいろんな人たちと出会い、たくさんの話を聞いてほしい、私はそう思います。よい循環がめぐっていけば、子どもたちはエネルギーを温存します。そして、風向きが変わったと本人が認識したところで、本人らしくエネルギーを発揮できるようになる。そのタイミングが来るまで、親は本人を信じて、待ってあげてほしいと思います。

私の経験から言えることは、学校へ行かないことにも大事な意味があり、必要な時があるんだということ。そのことを多くの方に知ってほしいと思い、いくつかのデータを示しながらお話しました。ありがとうございました。

(了/編集・小熊広宣)

【プロフィール】松本俊彦(まつもと・としひこ)
1967年生まれ。国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所薬物依存研究部部長、自殺予防総合対策センター副センター長。おもな著書に『薬物依存の理解と援助』(金剛出版)、『自傷行為の理解と援助』(日本評論社)、『「助けて」が言えない SOSを出さない人に支援者は何ができるか』(日本評論社)など多数。
『誰がために医師はいる クスリとヒトの現代論』
発売日:2021年4月1日
出版社:みすず書房
価 格:2860円(税込)
単行本:232ページ
(TEL:03-3815-9181)
『世界一やさしい依存症入門 やめられないのは誰かのせい? (14歳の世渡り術) 』
発売日:2021年8月25日
出版社:河出書房新社
価 格:1562円(税込)
単行本:234ページ
(TEL:03-3478-3251)

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不登校新聞

日本で唯一の不登校専門紙です。不登校新聞の特徴は、不登校・ひきこもり本人の声が充実していることです。これまで1000人以上の、不登校・ひきこもりの当事者・経験者が登場しました。

また、不登校、いじめ、ひきこもりに関するニュース、学校外の居場所情報、相談先となる親の会情報、識者・文化人のインタビューなども掲載されています。紙面はすべて「親はどう支えればいいの?」という疑問点から出発していると言えます。

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