10代の子どもが「市販薬の乱用」に走る怖い実態 精神科医が語る「若者たちの危機」
しかし、その行動には大きな心の痛みを伴います。それをすこしでもやわらげるために市販薬を大量に服用しており、結果として薬物依存症になっているのではないか、と私は見ています。これが薬物医療の臨床現場で私たち医師が出会っている10代の子どもたちの現実です。「市販薬の乱用なんてもってのほか」と、大人が頭ごなしに叱責することで解決するような問題ではないとつくづく感じています。
若者の自殺、75%が学校復帰
最後にスライド3をご覧ください。私は自殺に関する研究もしており、自殺で亡くなられた方のご遺族に、ご本人の半生について、ていねいに時間をかけて聞いていくという取り組みの一部を紹介したものです。そこで明らかになったのは、10代や20代で亡くなられた方の多くが不登校を経験していたということ。これはある程度予想していたことではありましたが、私が驚いたのは別の事実です。じつは、そのうちの75%の方が学校復帰をしていました。一時的に不登校になったものの、わりと速やかに学校復帰していたんですね。
私が臨床現場で接する子どもたちの多くは、不登校が長期化しています。なかには、学校復帰しないまま中学を卒業したり、高校生であれば退学する子もいます。10代や20代で自殺された方の多くが学校に復帰していたという事実には、正直驚かされました。
誤解しないでいただきたいのは、不登校の子どもたちを無理に学校へ行かせよう・戻そうとすると、薬物依存症になる、自殺するということを言いたいわけではありません。私がお伝えしたいことは冒頭でもお話した通り、「不登校はときに必要である」ということです。
不登校の子どもたちへの支援というと、大人はつい「学校へ戻ることがゴールである」と考えてしまいがちですが、それはあやまりです。子どもの立場に立って考えるならば、不登校は子どもたちが生き延びるための戦略である。そのように捉えることが重要だと考えています。
本日お話してきた通り、自分の居場所がなく、自分と似た生きづらさを抱えている者どうしのつながりをほっしている子どもたち。学校に過剰適応しようと無理を重ねるなかで市販薬を乱用して薬物依存症になっている子どもたち。そういう子どもたちがすくなからずいる、これが子どもたちを取り巻く現状だと思います。もし子どもたちが「学校へ行きたくない」と言うならば、そこには重要な意味があり、それが必要となるときがあるということを多くの大人に理解していただきたいと思います。