10代の子どもが「市販薬の乱用」に走る怖い実態 精神科医が語る「若者たちの危機」

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子どもたちはそこでリストカットをしたり、市販薬を乱用したりしています。なかには、死にたいと思う者どうしで意気投合し、集団自殺をする事件も起きており、安心してすごせる居場所がない子どもたちの存在が大きな問題になっています。

10代の薬物依存、市販薬が約6割

つぎに、私の専門が薬物依存症ですので、さきほどお話した市販薬の乱用をめぐる子どもたちの現状についてお話したいと思います。私は2年に1回、全国の精神科で治療を受けている患者さんの資料をすべて収集して研究する取り組みを続けています。そのなかで10代の患者さんのみに絞り、どんな薬物を乱用しているのか。年代別・種類別に分類したものがスライド2です。

【スライド2】

2014年のデータを見ると、もっとも多いのは脱法ハーブなど、いわゆる「危険ドラッグ」(48%)であり、全体のおよそ半分を占めています。その後、危険ドラッグに対する規制が強化されて入手しづらくなるにつれ、2016年には16・7%までに減少し、2018年には0%になりました。

他方、2016年から増えているのが「市販薬」(25%)です。2018年には41・2%、2020年には56・4%と急激に増加していることがわかります。ここでいう「市販薬」とは、ドラッグストアで誰もがかんたんに入手できるもの。たとえば「エスエスブロン錠」「パブロン」「ルル」といった、みなさんも1度は服用したことがあるであろう咳止め薬や風邪薬です。

変わってきたのは薬物の中身だけではありません。薬物を乱用する子どもたちの背景も変わってきています。2014年と2018年を比べてみます。

2014年に危険ドラッグを乱用していた子どもたちを見ると、高校を卒業した者は1割にも満たず、大半が高校を中退しているか、あるいはそもそも高校に通っていません。非行歴がある子どもも半数に達することから「危険ドラッグイコール非行問題のひとつ」と捉えることができました。

かたや、2018年に市販薬を乱用していた子どもたちを見ると、半数が高校に在籍中か、高校を卒業しています。非行歴もまったくと言ってよいほどありません。つまり、はた目には、まじめな子・よい子・学校になじめている子のように見えるわけです。

ただし、実際はそうではありません。彼らのなかには、適応障害やトラウマなどのメンタルヘルスに関係する問題を抱えていたり、「自閉スペクトラム症(ASD)」などの発達障害に起因する生きづらさを抱えていることがわかっています。つまり、市販薬を乱用している10代の子どもたちは、がんばって学校に通い、しんどい状況にも過剰に適応しようと無理を重ねている子どもたちである可能性が高いのではないか、と私は考えています。

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