学校から薬を勧められる「発達障害」の子どもたち 発達障害の児童はこの13年で10倍に増えている

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こうした向精神薬の服用を疑問視する声は、一部の教員たちからも上がっている。「クラスに2~3人は発達障害で薬を飲んでいる子がいます」。こう話すのは、東京都の公立小学校の宮澤弘道教諭だ。

「効果がないと量を増やされたり、薬の種類を変えられたりする。学校側は『やっとこの子は落ち着いて良かった』と思うけど、要は過剰投与されて、ぼーとしているだけなんですよ。親に話を聞くと、薬を飲んで食欲がなくなり、夕食が食べられなくなってしまっていると。中にはみるみる痩せていってしまう子もいます」

「ちょっと難しい子はいないほうが」

宮澤教諭は、「学校のルールがどんどん細かくなったことで、今まで問題がなかった子どもまで、あぶり出されるようになっている」と話す。

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「以前はいろんな子が普通学級にいたが、今は『定型発達』(発達障害のない状態)の子どもしかいられない教室になってしまっている。問題のある子どもに対しては、まずは(普通学級から週に何回か通う)特別支援教室を勧め、改善が見られなければ特別支援学級への転籍を勧める。転籍ができず、普通学級にいることになった場合、薬の量を増やそうという話になります」

実際、現在6年生になった後藤さんの息子は、副校長から「もっと楽に行ける学校があるのでは」と他校にある特別支援学級への転籍をにおわされた。

こうした「発達障害」とされる子どもを排除する一因が、教員への管理強化だ。2000年以降、教員への人事評価制度が徐々に導入され始め、2016年に義務化された。

「管理職が教室を見た時、がちゃがちゃしていたら評価が下がってしまう怖さもある。『ちょっと難しい子はいないほうがありがたい』という気持ちがあり、そこに『別の場所に行ったほうが、この子のため』という甘い言葉があると、そちらに流されてしまいます」(宮澤教諭)

多くの教師が「子どものため」という理由で発達障害を見つけ、医療機関につなげている。しかし、その裏には、教師への締め付けや業務過多から「学校のため」という本音もあることは否定できない。この10年で急増を示す発達障害の児童生徒数は、そうした背景があるといえる。

発達障害が専門のある小児科医は、「親御さんの不安が強いまま飲むと効果は今ひとつ。まず『お試しで使ってみよう』と伝えています」と話す。しかし、「お試し」と言えるほど気軽に服用を始めてよい薬なのだろうか。

後藤さんのように薬の服用を踏みとどまる母親がいる一方、子どもに薬を飲ませたことを後悔する母親がいる。

(第2回はこちら「子供に向精神薬を飲ませた親の深い後悔」

【情報提供のお願い】東洋経済では、発達障害に関連する課題などを継続的に取り上げています。こちらのフォームへ、情報提供をお待ちしております。
井艸 恵美 東洋経済 記者

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いぐさ えみ / Emi Igusa

群馬県生まれ。上智大学大学院文学研究科修了。実用ムック編集などを経て、2018年に東洋経済新報社入社。『週刊東洋経済』編集部を経て2020年から調査報道部記者。

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