小学6年生の息子がいる別の女性は、「ちょっと問題があると発達障害を疑われる」と憤る。
「3年生のとき学級崩壊が起こり、36人中8人もの子が、担任教師から『どこか(医療機関)に相談したほうがいいんじゃないですか』『検査を受けたほうがいいのでは』と声をかけられました。でも、学年が上がり担任が変わったら、何も問題がなくなりました」。
発達障害は原因が明らかでないため、血液検査や脳波などの数値で診断されるものではない。国際的な診断基準や知能検査などの尺度はあるが、最終的にはあくまで医師の問診によって診断される。
家庭や学校での様子を家族から聞き、「落ち着きのなさ」や「衝動性」といった特性がどの程度ならば発達障害なのか、それは医師の判断にゆだねられる。
文部科学省の統計が示す急増
学校で発達障害の子どもは増えている。文部科学省は、普通の学級に在籍しながら週に何日か別の教室で授業を受けている軽度の障害のある子どもの数(通級指導を受ける児童数)を集計している。
この調査によると、2006年に約7000人だった発達障害の児童生徒は、2019年には7万人まで急激に増加している。
発達障害とされる子どもの増加に伴い、脳の中枢神経に作用する向精神薬の投与も増えている。
医療経済研究機構が2014年に発表した研究によれば、13歳~18歳の患者のうちADHD治療薬を処方された割合は、2002年~2004年と2008年~2010年を比較すると、2.5倍となった。ADHD薬だけでなく、抗うつ薬、抗精神病薬はそれぞれ1.4倍となった。
2007年に日本で初めて承認されたADHD向けの薬が、中枢神経への刺激作用がある「コンサータ」だ。厚労省が公開する医療機関の支払い明細書のデータ(外来患者のみ)で、コンサータの処方量を集計した結果が下記の図だ。2種類の錠剤(18㎎と27㎎)を用量(成分量)で換算すると、2019年の19歳以下に対するコンサータの処方量は、2015年の3.5倍にまで増加していた。
ADHDに対する薬の種類も増え、現在では4剤が使われるようになった。そのうち、塩野義製薬の「インチュニブ」の売り上げは、発売時(2017年)の19億円から、2020年には131億円まで伸びている。
発達障害に使われる薬はいずれも、障害の原因そのものを改善する根本的な治療ではなく、多動性を抑える、集中力を高めるといった対症療法だ。
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