日本コロムビアを買収したフェイスの「素顔」 元気のない日本の音楽産業をどう変えるか?
大学卒業後に就職した任天堂では、『マリオブラザーズ』の音楽チームに配属された。しかし、自分で音楽の仕事をしたかったので、当時勢いに乗りつつあった任天堂を、たったの1年で退職。「親からは『何、考えてんねん』と怒られ」たと笑う。
音楽CDはソフトと呼ばれるが、実際は「CDというハードに音楽というソフトを入れて流通させているだけ」、と平澤社長は言う。「ハードを流通させるのではなく、ネットワークを使って音楽というソフトを流通させる」、イノベーション(革新)を起こしたいとの一念からフェイスを創業した。
ある日、会社の仲間たちと本屋に立ち寄ると、そこに何種類もの「着メロ本」が並んでいた。本に記載された曲データを、数字キーで打ち込み、着信メロディを自作するものだった。1988~99年当時、同種の書籍は、年間800万部ほど売れていたという。ただ、キー操作がめんどうなうえに、機種ごとに打ち込み方も違うのでユーザーの労力は相当である。それなのにバカ売れしていると知って驚いた。
他方、近く「iモード」というインターネット接続できる携帯電話がキャリア(通信事業者)最大手のNTTドコモから出る、と聞いていた。平澤社長の頭の中で、二つの点がつながった。「端末に音源を入れてダウンロードできる仕組みを作れば儲かる」というアイデアがひらめいたのだ。
三者でドコモに乗り込む
早期に市場参入するには、「その分野の最も強い企業と協業する」アライアンス戦略が鍵だと、平澤社長は考えた。京都のLSIトップメーカーのロームには音源開発、三菱電機には音源チップの携帯電話端末搭載を依頼。最後は三者でドコモの担当者に会いに行った。
「着メロ本がめちゃめちゃ売れていますけど、ドコモさんは1円も儲かっていませんよね。この仕組みを入れたら、課金ビジネスで儲かりますよ」と説明した。フェイスの場合、パソコン通信などのダウンロード課金と著作権処理に関し、10年近くノウハウを持っていた。こうして着信メロディをダウンロードするための世界統一フォーマット(CompactMIDI)が生まれたのである。「典型的なウィン・ウィンモデルを構築できたことがヒットの理由」(平澤社長)。2001年3月期、従業員23人のフェイスは、1人当たり利益が軽く1億円を超え、任天堂をも上回った。
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