鹿児島県民が大絶賛する「飲食チェーン」の正体 特別な日には1000人以上の行列ができることも

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

人気メニューは天ぷら板そば(990円)、黒豚そば(730円)など。創業当時からある峠なべ(780円)も根強い人気を誇る。そばつゆは鹿児島らしい甘めの味付け。そばのタイプはつなぎに山芋を使った「薩摩そば」で、太麺と細麺の2種類を用意している。喉越しのいい細麺を冷たいそばで、風味と歯ごたえが楽しめる太麺を温かいそばで出しているが、自分で好きなほうを選ぶこともできる。

「黒豚そば」730円。薬味のネギ、ゆず、柚子胡椒が甘めのつゆに風味を添える(写真:著者撮影)

サイドメニューの玉子焼き(480円)も外せない。「玉子焼きはグループで1つ頼まれる方が多いですね。本返しをベースに味付けした卵焼きで、そば屋ならではのものです」と郷原さん。意外な人気メニューはカレー(450円)。ブイヨンからこだわって手作りしたスパイスの効いた逸品だ。

困難と言われていた本格そば屋のチェーン化

そば茶屋の運営会社である株式会社フェニックスは、1972(昭和47)年、現会長の堂下博司氏が創業。当時の屋号はフェニックス・フーズで、冷凍食品製造・学校給食関連を手掛けていた。

その後、1977(昭和52)年に吹上町(現・日置市)の伊作峠に、そば茶屋の1号店をオープン。吹上町は堂下氏の地元でもあり、車で近くを通るときに「ここにかやぶきの古民家のお店を構えておそばを提供したら、田舎に帰ってきたような気持ちでお客さんに喜んでもらえるだろうな」と夢を描いたことに始まった。

現在のそば茶屋1号店(画像提供:株式会社フェニックス)

水車がカタコトと廻り、秋には柿が実って野山を彩り、その風景を眺めながらそばを食べる。そんな情景が頭の中に出来上がっていった。

1970年は外食元年と呼ばれ、1970年代はファミリーレストラン・ファストフードのチェーン展開が広まっていった時代である。しかし、当時のそばの世界では、本格そば屋のチェーン化は困難と言われていた。

しかし、実際にオープンしてみると予想以上の来客につながる。そこから「目の前のお客様に喜んでもらおう」と日々研究を積み重ねて、着実にファンを増やして、店舗を増やしていく。今年2022年の現在、そば茶屋は15店舗に展開している。

「これだけ広い駐車場、多い席数の大きな造りの店で、本格的なそばを提供する。全国的にも珍しいタイプのそばチェーンだと思います」

そばは「挽き立て」「打ち立て」「湯がき立て」が身上。毎朝5時頃から、セントラルキッチンで石うすでそばを挽くところから始まる。熱で香りが逃げないように、1分間20回転のペースでゆっくりと廻すのが香味豊かな玄そばの秘訣だ。そうして挽いたそば粉で打った生麺を、各店舗に配送。注文を受けるたびに湯がいて提供する。そばは次の日に持ち越さず、その日中に使い切る仕組みだ。

次ページ現場最重視の運営方針
関連記事
トピックボードAD
キャリア・教育の人気記事