話題の「扉付き個室バス」、コロナ追い風か逆風か 城崎温泉・東京から大阪まで、2台を徹底比較

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乗車後、関東バスの黒川征一丸山営業所長に話を聞いた。

――なぜ個室バスを実現しようと考えたのですか。

夜行高速バスは時間を有効に使え、ほかの交通手段よりも安価という利点があるが、快適性に不十分なところもあり、利用を敬遠する人もいた。そこで「動くホテル」をイメージし、眠っている間に快適な移動を実現するために導入した。通常の料金は大人片道2万円で、一般の夜行高速バスよりも高価だが「新幹線+ビジネスホテル代」とほぼ同額と考えて、設定している。

――動くホテルとして、こだわった部分は。

担当する乗務員には、接遇の専門家を招いて教習を行っている。また、乗客から「車内向けの着替えを持っていくと、荷物が増える」という意見があり、リラックスウェアを貸し出すようにするなど、ソフト面でも快適に乗車してもらえるよう努めている。ハード面でも、乗り心地を重視し、速度を抑えて、騒音振動を抑制している。

――利用者からの反応は。

「深夜に目覚めても、周囲に気兼ねなく明かりをつけて読書ができた」「夜にカーテンを開けて車窓の風景を楽しめた」「トイレに立つときなど、周囲に気が付かれずに済んだ」「周囲に気を使うことなくパソコンで仕事ができた」などの意見があった。

――コロナ禍の中で、個室バスをどう生かしたいと考えていますか。

車内の換気・消毒・抗菌を行い、運行開始時から、個室にはイオン発生装置も設置するなど、コロナ対策を行っているが、緊急事態宣言や移動の自粛要請の影響もあり、乗車率が大幅に減少した。現状、ほぼ満席の週末を中心に運行している。アフターコロナを見据えて「ドリームスリーパー東京大阪号」を含めた、バス事業をどのように再構築していくかが、今後の大きな課題だ。

安藤 昌季 乗り物ライター

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あんどう・まさき / Masaki Andou

1973年、東京都生まれ。編集プロダクション「スタジオサウスサンド」代表で、通勤電車の座席から寝台まで広く関心を持つ「座席鉄」。「鉄道ぴあ」「旅と鉄道」「AERA.dot」「週刊日本刀」などで、乗り物・歴史関係の執筆を広く手掛けるほか、鉄道キャラクター企画、ゲームデザイン、イベント主催なども。著書は「教えてあげる諸葛孔明」(角川ソフィア文庫)、「夢の新幹線 ものしり学習帳」(玄光社)「日本全国2万3997.8キロ イラストルポ乗り歩き」(天夢人)

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