話題の「扉付き個室バス」、コロナ追い風か逆風か 城崎温泉・東京から大阪まで、2台を徹底比較
座席正面のモニターには期間限定サービスとして「バスビュー」が映し出されている。バスの各部にカメラを設置し、4方向の景色が見られるユニークなサービスだ。豊岡市の観光プロモーション動画をスマートグラスで視聴できる「ARグラス」も楽しい。
全区間に乗車すれば3時間を超えるため、このような退屈させないコンテンツは大切で、新時代の高速バスらしさを感じた。個室の外の話だが、広々としたパウダールームが設置され、特筆すべき設備と感じる。
設備は快適で夜行の個室型高速バスと比較しても遜色ない。かつ個室内は荷物を置けるだけの床面積もある。テーブルが大きく、電源も使えるので、仕事も十分にできる施設だと感じた。
全但バスインタビュー
乗車後、全但バスの小坂祐司バス事業部長に話を聞いた。
――なぜ個室バスを実現しようと考えたのですか。
コロナ禍により利用者が高速バスで7割減、路線バスでも4割減と大幅に減っている。以前の需要に戻るのは厳しい認識の中で、新しい公共交通、旅のコンテンツとして「個室バス」が必要と考えた。個室バスであれば、例えば身体的事情から感染症対策がしにくい人にも細やかな対応ができる。密を避けつつ、車内での仕事も可能だ。
――実現するうえで困難だったことは?
コロナ禍でメーカー側にも生産・業務自粛があり、設計段階から実現までに時間を要した。
――快適性へのこだわりを教えてください。
大手の事業者のような投資が難しい中、質感を落とさずに完全な個室空間を実現するように努めた。特に、プライバシーに配慮すべく、密閉空間にこだわった。各所の隙間をなくすために何度も試行錯誤を繰り返した。
また、バス業界では初めてだと思うが、車外にカメラを設置した高速バス車外鑑賞システム「バスビュー」を実現した。「高速バスは目線が高いので、風景が魅力的」という意見があり、費用的にオープントップバスは導入できないが、車外カメラの設置ならできるのではないかと考えた。航空機の機外カメラ鑑賞を参考にしたが、メーカーも当社も始めての試みであり、設置位置や鑑賞範囲をどうするか、検討を重ねた。
期間限定サービスとして試行中の「ARグラス」も、KDDIと協議のうえ、どんな動画が鑑賞できるか、端末の設置方法や運用方法に何度も検討を加えたものだ。
――乗客の反応は。
「移動時間で仕事ができた」「気を使わずにリクライニングできる」「周囲を気にせず、ゆったりと旅ができた」「異性の視線が気にならないのがいい」「料金がプラス1000円は格安」といった意見があった。
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