日銀バブルが国民に押し付けるツケ 狂い始めた追加緩和の前提
アベノミクス批判派が繰り返し言及しているように、そもそも追加緩和自体、副作用やどこまで効果があるかについて疑問が残る。
毎月発行される国債をほぼ買い占める日銀によって、短期国債市場はすでに悲鳴を上げ始めている。10月以降、マイナス金利が恒常化し、日銀の購入額に応札額が届かない「札割れ」も発生している。マイナス金利は、投資家が金利を払ってでも国債を買いたがる異常事態だ。
国債と違って市場規模の小さいETFやJ-REITの買い入れ増額も、将来のリスクの芽をはらんでいる。出口の困難さも想像するに余りある。日銀が出口を模索するときは、物価上昇率2%の目標が実現するときだが、それは長期金利が上昇するタイミングと重なる。そこで国債を売却すれば、ますます金利が上がる。GDP(国内総生産)比の債務残高が200%を超え、先進国中で突出して多い日本にとって、金利上昇は致命的だ。
問われているのは構造改革
年金基金などの長期投資家は、今回の追加緩和によってアベノミクスの見直しに入った。「楽観論とは言えないが、アベノミクスの悲観論が見直され、来年以降も日本株が相対的に買われやすい状況が続く」(経済アナリストの豊島逸夫氏)とみられているが、豊島氏が指摘するように、問われているのは、安倍政権が国民に痛みを伴う構造改革に踏み込むかどうかだ。
安倍政権は第一の矢(金融緩和)と第二の矢(財政出動)による株高円安に浮かれ、この2年近く、財政再建や国民に痛みを伴う構造改革に十分踏み込んでこなかった。選挙で増税を支持する国民はいないだろう。「消費税先送り」という一見心地良い争点を掲げる解散・総選挙によって、本当に大事な政策論議も先送りにされることが一番怖い。
皮肉なことに、「クロダからのギフト」は、消費再増税を後押しするという送り手の意図通りに使われず、株価を上げ、総選挙における与党の勝利を後押しするために「いいとこ取り」されようとしている。このツケを将来払うのはわれわれ国民だけに、その罪は一層深い。
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