米価急落で不満が噴出! 戸別所得補償の矛盾

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 ところが今回の戸別所得補償では全農家対象に逆戻り。しかも今年のような不作の場合、大規模農家ほど損失が拡大しかねない。近藤氏は「小規模で片手間にやっている人を同水準で補償する手法はバラまき」と批判する。

実際、近藤氏の顧客の一人、新潟市内で農業法人を経営する藤田道雄さんは経営方針の転換を決めた。これまで周辺農家から土地を借りて農地を拡大してきたが、米価下落を受け、作業効率の低い2、3の農地の契約を打ち切る交渉を始めた。「この米価で耕しても赤字。荒地にしたくない、と懇願されてもビジネスなので割り切るしかない」。

藤田さんの今年の所得は、転作用に作付けしたネギの価格高騰で前年比1割減程度にとどまる見込みだ。だが、来年の経営計画はコメの価格次第と、先は見えない。

「今の農業は補助金頼みのうえ、制度が毎年変わるばくちのようなもの。とても息子には継がせられない」。

頼みの綱は中国研修生など安価な労働力だ。農水省は戸別所得補償による所得増で11年以降、新規就農者が8・4万人増え農業活性化につながると見る。だが、農家は一様に「こんな米価ではありえない」と冷ややかだ。

生源寺眞一・東京大学農学部長は「今の混乱は民主党が中長期的なビジョンなく政策転換した結果。財源も緊迫する中、制度存続自体の議論をすべき」と話す。農水省は来年度には補償対象を畑作にも拡大する予定で9160億円を概算要求した。戸別補償は矛盾を抱えながら、次のステップへ移ろうとしている。

(麻田真衣 =週刊東洋経済2010年11月6日号)

※記事は週刊東洋経済執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。
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