米価急落で不満が噴出! 戸別所得補償の矛盾

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 同制度では減反に参加したコメ農家に対して10アール当たり一律1万5000円を提供、さらに収穫期から翌年1月までのJAなどの出荷団体から卸売業者への販売価格(相対価格)の全国平均が過去3年の平均を下回った場合、その差額分を変動分として支払う。今年度の農水省の予算は5618億円で約130万件が加入している。

「補償」に目をつけた卸売業者から「補償分を下げて、と言われた」とある農家は打ち明ける。過剰在庫が多い岩手や福島、質が低下した新潟などでは前払い金が大きく減り、変動分が支払われても収入減となる農家が出てくると予想される。

前出の鳥喰生産協業の今年度の利益は補助金収入を入れても昨年比約4割減の574万円。来年4月に変動分が加算されても一俵当たり600円の収入減になると試算する。大和さんは「所得補償と言いながら所得減になるのはおかしい」と憤る。

自民党時代には米価急落を避けるためコメの需給調整を行うこともあったが、民主党は価格維持のための需給調整を否定。「在庫を多く抱えるJAが政府に調整の圧力をかけるため、あえて前払い金を低く設定している」(農水省関係者)と見る向きもある。ただ、コメ卸大手は「在庫が重いだけでなく販売も鈍い。米価が持ち直す材料はない」と断言する。

全農家対象の「バラまき」 大規模農家ほど苦境に?

戸別補償は価格下落だけでなく、中期的な農家経営にも悪影響を及ぼすと危惧する声も多い。新潟で農家の経営コンサルティングを行う近藤信税理士によると、経営に協力する農家10軒のほとんどが今年度は減収となる見込み。

「補助金なしでも黒字に近づいていたのに、新制度ではしごを外された」とこぼす。

自公政権下の07年、「戦後農政からの脱却」と銘打ち、全農家を対象にする補償制度から、効率的な経営を推進するため大規模農家に対象を絞る補助政策へと、大きく舵を切った。「選択と集中」により農業法人化が加速するなど一定の成果があった。近藤氏の顧客も近隣の兼業農家などから農地を賃借し、大規模化を進めてきた。

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