レクサスはなぜクーペ「RC」を出したのか いまどき2ドアの新型高級車が果たす役割

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レクサスはこれまで、その上回るべきものをホスピタリティに頼ってきました。たとえば車中からボタンひとつでオペレーターに繋がり、電話先からナビを遠隔操作して目的地を設定してくれるなんてサービスを、10年近く前からやっていたわけです。それらも含めたサービスにまつわる顧客満足度は他を圧倒しており、結果として「レクサスからレクサスへ」と乗り換えるリピート率の高さにも現れ始めています。

が、今度のRCはそれだけではないものを持っているんです。それは、今までドイツ勢に対して大きく水を開けられていた「走り」。RCでは設計や実験のみならず、生産部門もひっちゃきになってボディを鍛え上げ、サーキットスピードでもがっつり走り込めるサスやブレーキも仕立てた上で、スコーンと気持ちよく回る大排気量の自然吸気エンジンを載せています。

実用車にない華こそが最大の購入動機

これ、燃費の面では確かに欧州のダウンサイジング系4気筒ターボにはかないませんが、そのぶんを補えるフィーリングの艶やかさがあるんですね。実用車にはない華こそが最大の購入動機となるクーペとしては、これはむしろポジティブに捉えられます。

実はこのRCをベースに、477馬力の排気量5リッターV8エンジンを搭載した「RC F」というクルマもありまして、こちらのお値段は953万円から・・。一般的思考からは余りにかけ離れた好事家銘柄ですが、使ってるものや、やれることを考えればその値札、決して高くはないと思うのはクルマ馬鹿の悲しい性ですね。

ともあれ、役者は揃いました。たかだか月販目標80台のRCをもって、巷でどのくらいのウケがとれるのか。それは今後のレクサスのビジネス全体を映し出す鏡にもなり得るかもしれません。

渡辺 敏史 自動車ライター

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わたなべ としふみ / Watanabe Toshifumi

1967年福岡県生まれ。単に走行性能だけではなくマネジメントやマーケティング的視点からも自動車を分析。一般誌、専門誌を問わず寄稿。

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