ヤフー、「初の減益」でスマホ時代に試練 対楽天では出店数で勝ち、商品数で負ける

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創業以来初の減益となる見込みのヤフー。経営陣が世代交代、宮坂社長は次々と新機軸を打ち出す。

スマホ時代でも成長を続けられるのか――。

ネット社会の隆盛と歩調を合わせて業績を伸ばしてきたヤフーが今、正念場を迎えている。10月29日に同社が発表した中間決算は、営業利益が1996年の創業以来、初の減益。咋秋から「eコマース革命」と銘打ち、EC(電子商取引事業)で手数料の大幅無料化に踏み切ったことなどが、主に影響した。主力の広告事業を見ると、PC時代に握った覇権がスマートフォン(スマホ)の普及によって、かつてほどの絶対的な強さではなくなった。タイムライン広告を展開、「スマホシフト」で先行するフェイスブックなどを、今や追いかける立場になりつつある。

 中間決算(2014年4~9月期、国際会計基準)は、売上高が2032億円(前年同期比2.6%増)、営業利益が947億円(同4.1%減)、純利益は666億円(同2.1%増)。ECの無料化を進めたことで、手数料収入が得られなくなるとともに、ネット通販関連のプロモーション費用が生じ、半期で約100億円の減益要因になった。

出店料の「無料化」は先行投資

ECの大幅無料化は、ネットオークション「ヤフオク!」の出品手数料や、ネットショッピング「Yahoo!ショッピング」の出店・販売手数料の収益を打ち消し、営業減益の大きな要因になった。が、プラスの効果もある。

というのも、出店する事業者や売買する参加者の利用が活発化し、7~9月のEC事業の流通総額は、前年同期を1割強上回る2811億円に増加。Yahoo!ショッピングの出店数は、9月末時点で19万3000店と、昨年の同時期から約10倍に膨らんだ。楽天が運営する「楽天市場」の4万1000店を抜き、出店数で国内トップのECサイトになったことについて、決算会見で宮坂学社長は、「(無料化から)たった1年で日本一になるものができた」と胸を張った。それまでの手数料モデルを脱却し、広告収入モデルへの移行を目指すうえで、先行投資が一定の成果を上げたと見ることもできる。

ただし、出店数は一気に拡大したものの、課題も浮き彫りになっている。扱われる商品数では、楽天市場の1.5億点に対し、Yahoo!ショッピングは1.2億点。出店数で楽天に圧倒的な差をつけながら、一方で商品数が下回る理由は、無料化を機に出店の登録をしたが、実際に”稼働”している店が少ないためだ。ヤフーの大矢俊樹CFOは会見で、「実際に稼働しているのは半分弱の規模」と説明。「来年度は品数でも1位になり、『ここに来れば何でも買える』という認知を植え付けられると思う」と、期待をこめた。

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