JFEスチールで浮上、偽装請負疑惑の全容
JFEスチールと同社の下請け企業に対し、突然の雇い止めを受けた下請け企業の元社員4人が昨年7月に起こした裁判。両社の違法行為(偽装請負)を示唆する社内資料が10月初め、横浜地裁川崎支部に提出された。
JFEは社内の「コンプライアンスガイドブック」で、請負契約の形を借りて労働者派遣法の規制を逃れようとする行為(偽装請負)を固く戒めている。だが、一連の資料や関係者の証言で、JFEの法令順守体制に疑問符がつく形になっている。
事件の発端は昨年3月末だった。
JFEスチール東日本製鉄所京浜地区(川崎市)内の下請け企業で、従業員の雇い止めが続発。その3カ月後、元従業員らが同社やJFEを相手取って、地位保全(現職復帰)を求める裁判を起こした。
下請けは業務関与せず JFEが直接指示か
「あなたとの契約は今日で終わりだ。明日から来なくていい」
下請け企業「共和物産」(東京・渋谷区)の契約社員として働いていた渡邉伸久さん(57)が、同社の所長からクビを宣告されたのは昨年3月31日。鋼板にカラー塗装するラインでの仕事を午後3時に終えた直後だった。実は同じ日、製鉄所内では、ほかにも4人の契約社員がクビを言い渡されていた。鋼材の運搬に従事していた中井智さん(42)は、「荷物をまとめて今すぐ帰れ」と所長に通告された。
その日以降、渡邉さんや中井さんは失業に直面。50代後半の渡邉さんは今も仕事が見つかっておらず、生活保護を受給している。