見えてきた枯渇の時期 v6移行へ円滑な仕組みを

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 米国では、軍事目的での導入を皮切りに、今年度末までに政府機関のネットワークを完全なv6方式に転換し、16年度末までにはクライアントアプリまで含めすべてを転換するという。v6の技術開発では一時期、先陣を切っていたはずの日本は、まだまだISPなどの関係者の間にとどまっている。一つにはv4の延命策が効いたということもあるが、最大の問題は互換性がない点だろう。

互換性なく普及に足かせ

単純にv6に移行すれば解決、といかないところが、この問題の複雑さを増している。基本的にv4とv6の間に互換性はない。v4のままでは、新たにv6で提供されるサービスは受けられない。互換性を持たせるための技術開発も進められてはいるが、いずれは、携帯電話サービスがmovaからFOMAに移行したように、全面置き換えと考えるほうがいい。移行期間にどのくらいの時間がかかるのか、現時点では未知数で、ISPにとっては投資や運用費用がv4、v6と二重にかかる。このコストがユーザーにどの程度の負担となって跳ね返ってくるのか。

また、v4からv6に変換する際のセキュリティの問題もある。すでにウィンドウズ7をはじめPCでは、v6対応可能になっている。にもかかわらず、セキュリティソフトはv4にしか対応していないため、抜け穴だらけだと専門家は指摘する。

利用が進まないために技術的にこなれておらず、思わぬセキュリティリスクが顕在化する可能性もある。しかも、スマートグリッドをはじめとする白物家電機器のネットワーク化では、主要な管理者が家庭の主婦と想定されるが、いったいどれだけのリスク意識を持てるのか、事実上管理が可能なのか、と疑問視する声もある。

心臓ペースメーカーや透析など医療情報のネットワーク化も、総務省の構想に含まれているが、ここでも個人情報保護の問題が生じてくる。セキュリティ技術の進歩と同時に、「v6駆け込み寺」といった24時間365日トラブルに対処できるような社会的なインフラ作りも必要だろう。

(シニアライター:小長洋子 撮影:尾形文繁 =週刊東洋経済2010年10月23日号)

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