脱「バーバリー」依存、浮沈かかる三陽商会 新たなブランド戦略でV字回復なるか

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新たに展開する「マッキントッシュロンドン」で百貨店の売り場を確保する狙い

マッキントッシュは防水性に優れたゴム引きコートで著名な英国ブランド。三陽は07年から価格を抑えたセカンドライン(普及版)「マッキントッシュフィロソフィー」をライセンス展開してきた。ここに高価格帯の「マッキントッシュロンドン」を加える。

コートをメインとしたブランドのため、バーバリーコートで使用してきた縫製工場など既存設備も活用できる。マッキントッシュの商標権を持つ八木通商は「(三陽は)全国の客層を広く知っており、ものづくりへの信用がある」と期待を寄せる。

三陽は「今までにない規模の投資をする」(佐久間睦専務執行役員)と広告宣伝や店舗投資を積極的に行う構えだ。今回のライセンス期間は19年末までの5年間。アパレルのライセンス期間としては標準的だが、バーバリーの15年間、基幹ブランドの一つ「ポール・スチュアート」の10年間と比べると、長いと言えない。長期的な関係を築くうえでも、予定する200店の売り場確保と売り上げの拡大は、当然必要になる。

二兎を追う難しい舵取り

事実上、「バーバリー」を冠するブランドは15年7月以降、英バーバリー本社が日本法人を通じて直営展開するのみとなる(撮影:尾形文繁)

ただ、バーバリーの抜けた穴をマッキントッシュだけで補うのは難しく、ほかのブランド育成も重要になる。基幹の一つに位置づけるオリジナルブランドの「エポカ」は、イタリア人デザイナーを招き、世界ブランド化へ舵を切った。セカンドラインでファッションビルなど百貨店外での展開にも力を入れている。

そこで問われるのが各ブランドのバランスの取れた育成だ。三陽にとって「店舗内装などこれまでバーバリーに優先的に投資を回してきた。その分、他ブランドの育成が遅れた面は否めない」(同社幹部)という反省もある。マッキントッシュを主軸に回復を図り、独自ブランドを強化する。この二兎を追う難しい舵取りを今後迫られる。

「週刊東洋経済」2014年10月25日号<10月20日発売>掲載の「核心リポート04」を転載)

鈴木 良英 東洋経済 記者

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すずき よしひで / Yoshihide Suzuki

『週刊東洋経済』編集部記者

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