アパッチ攻撃ヘリの調達、なぜ頓挫? 問われる陸自の当事者能力

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このため平成20(2008)年度から防衛省は、新規の防衛装備調達に関して、初年度に装備調達費とは別に、生産設備やライセンス生産であればライセンス料などの「初度費」の支払いを行うことにした。

だが、この初度費にはもう一つ重大な問題が隠されている。防衛省は調達費から初度費を除外して公開し、装備の単価を実際より安く見せかけているのだ。防衛省がウェブサイトで公開している平成20年度以降の概算要求や政府予算などには、初度費の金額が掲載されていなかった。

平成24(2012)年度からは防衛省の公開する資料で初度費が明示されるようになったが、これは財務省から促された結果であり、防衛省が自主的に行ったものではない。

しかもその初度費も極めて不透明だ。平成24年度から公開された初度費は本当の意味での初度費ではない。本来初度費はライセンス料や、製造ラインの構築費、ジグなどの調達費用など、生産当初にかかる費用であったはずが、その後の細かな改修費用なども、初度費として計上されているのだ。

このため調達が開始されたあとも、延々と初度費が計上されている。5年でも10年でも初度費は計上できるのだ。本来導入以降の改修費は別途計上されるべきだ。また導入にあたって初度費の総額が明記されることはない。だが本来装備導入に際して初度費の総額を明示することが納税者と国会に対する責任のはずだ。だが、初度費の導入でますます装備調達予算が不明瞭化している。

つまり現在の初度費は、装備調達を安く見せかけるために利用されているとしか思えない。

話をAH-64Dの調達に戻すと2011年度から2013年度までに毎年1機ずつ予算計上されて、3機、合計13機の調達が終了した。だがたった13機では訓練や整備を考慮すれば、実際に常に稼働できる5~6機程度であり、部隊としての運用は事実上困難だ。

また既存のAH-1Sは老朽化に加えて整備・修理予算が充分に確保されず、機体からパーツを外して別の機体に取り付ける「共食い」整備をしている。このため稼働率が大きく落ちている。陸自の攻撃ヘリの能力は大きく低下している。この点からも陸自にはAH-64Dを62機も整備する予算を捻出する余裕などなかったことは明白だろう。

国産機の調達も突然中止

国産のOH-1

陸自のヘリでは国産のOH-1も当初約260機の調達が予定されていながら、わずか34機で調達が中止された

OH-1は観測ヘリOH-6の後継として開発されたが、通常の観測ヘリが5億~8億円程度であるのに対して調達単価は20億~25億円と極めて高額だった。

しかも当初観測ヘリで必要不可欠なデータリンク機能が欠除していた。また地表近くを匍匐飛行して情報を収集するにもかかわらず、自己防御兵装は近距離用対空ミサイルだけで、自衛用の機銃など対地攻撃兵装も搭載していない。恐らくはコスト削減のためだろうが、極めて中途半端な機体となった。

調達が中止になった理由は他にもある。OH-1は純国産と称されているが、実は海外のベンダーからもコンポーネントを調達していた。OH-1の毎年の調達数は少なく、しかも不安定なので、外国のベンダーが「こんなものは商売ではない」と匙を投げて、供給を断ってきた。これも調達停止の大きな理由である。つまり自衛隊の調達には外国から見ると異様で、効率を無視したものであるということだ。

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