YKK流哲学「善の巡環」、“部品屋の矜持”を支える

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 このファスナーの開発自体は新拠点開設以前に着手されたが、開設後は開発スピードが格段に上昇したという。イタリア社の長柄社長は「この商品に限らず、客の要望をフィードバックして開発部隊が手直しするという一連の反応が速くなった。具体的には言えないが、難しいテープや太い務歯のファスナーなど、今後日の目を見そうな案件がたくさんある」と手応えを語る。

拠点新設は副次的な効果も生んでいる。草山昌洋・欧州R&Dセンター所長は「開発スタッフの感性のとらえ方が変わった」と振り返る。「一見無駄でも見ていて心地いいという、非常に表現しにくいデザインが、欧州では称賛される。現地で生活してみて最初は不便だと思っていたものが、使っていくうちに『こういうものなんだ』と受け手としての意識が変わったとき、ポイントを置く場所の違いが理解できた」。

建材事業再建が急務 ファスナーの経験生かす

ただ、YKKの業績は、2006年度をピークに下落局面にある。先進国を中心にアパレル需要が激減した影響は大きい。が、それ以上に暗い影を落としているのが、ファスナーと並ぶYKKの屋台骨、建材子会社YKK APの低迷である。

売上高の85%を海外で稼ぐファスニング事業に対し、建材は8割以上が国内向け。ところが、肝心の国内市場は冷え込んでいる。07年の建築基準法改正や08年のリーマンショックなどが尾を引く形で、09年度の新設住宅着工戸数は45年ぶりの低水準に落ち込んだ。本格的な需要回復が望みにくい状況下、建材でもファスナーと同様に海外展開の加速が急務となっている。


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