間違いだらけ! 消費増税議論のナゾを解く 「軽減税率は弱者保護になる」も大誤解?

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経済学では、生涯という長期単位で見て、消費税は比例的であると考えます。貯蓄は、老後に備え、老後はその貯蓄を取り崩して消費する(相続されても同じ)からです。所得はすべて消費に回ります。

こうした誤解もあり、消費税率の引き上げに関連して、生活必需品などの税率を低くする、軽減税率の導入が焦点となっています。

付加価値税を1960年代に導入した欧州では、すでに軽減税率は失敗だったことが明らかになっています。食品の軽減税率は、分配面でも、効率性の面でも優れてはいなかったのです(「マーリーズ報告2010年〈英〉」)。

食品の軽減税は、高所得者をより優遇します。高所得者のほうが、生活必需品や毎日の食材にも、多くの支出をするからです。

食品軽減税率を導入する場合、たとえば10%の税を5%に軽減するとしましょう。その場合、単身世帯女60歳以上の層が、年間2万932円の減税、50~59歳の2人以上の世帯では4万4673円もの減税になります(参照:「株高・・恩恵を受けるのは30歳代の13倍の有価証券を持つ70歳以上の世帯。70歳以上が買う牛肉価格は全世代の中で最高」日経新聞2014年10月12日『消費は戻るか』)。

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軽減税は、実際には、高所得者の優遇措置なのです。そして、もし弱者を優遇しようと思うのならば、直接給付するほうが効率がいいのです。

消費税は、グローバル化時代にも適した税です。海外からの輸入品にも、日本の消費税は適用されます。逆に、日本製品を海外に輸出する場合は、消費税はかかりませんので、輸出価格を引き上げません。海外市場で、日本製品が、現地製品と価格面で対等に戦えるというメリットは大きいのです。

最後に消費税と所得税、法人税の違いについて、あらためてまとめてみました。税は税でも、特性は大きく異なっているのです。

菅原 晃 高校教師

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すがわら あきら / Akira Sugawara

1965年生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業。玉川大学大学院文学部修士課程(教育学専攻)修了。現在、北海道の公立高等学校の教諭を務める。

前著『高校生からわかるマクロ・ミクロ経済学』が、「現役高校教師による経済学の最高の教科書」と大きな評判を呼び、ベストセラーに。わかりやすく経済学の本質を伝えようとする骨太の解説に定評がある。

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