間違いだらけ! 消費増税議論のナゾを解く 「軽減税率は弱者保護になる」も大誤解?
所得税で徴収するのも限界
では、同じく3本柱のひとつ、所得税はどうでしょうか。実は、所得税は税収が減ってきており、全盛期の55%程度になっています。所得税は所得が高くなるほど、税負担が重くなるという、累進課税制が適用されています。累進税率は段階的に引き下げられ、現在では次のようになっています。
その結果、現在では、人数で9.8%を占めるにすぎない給与所得1000万円超の人が、所得税額の76%を負担しています。給与所得者の平均年収である、420万円層の人たちは、所得税の7.3%しか払っていません。
理由は、「控除」にあります。日本のGDPは500兆円、その半分の250兆円が給与所得ですが、実際に課税される額は、110兆円分にすぎません。基礎控除、配偶者控除、給与所得控除、社会保険料控除、公的年金等控除、生命保険料控除etc……。年収が低くなれば、実質的にはゼロ課税になります。課税最低限は日本の場合261万円からです。それ以下の人は所得税を納めていません(英国の場合約85万円から課税されます)。
2015年度より、課税所得金額4000万円超という区分が設けられ、ここに課される税率は現行の40%から45%に引き上げられます。しかし、これで増える税収は600億円ほど。富裕層への課税も、限界に来ています。
消費税の軽減税率は、弱者保護になりうるか?
さて、ここまで見てきたように、法人税・所得税は、社会の一部に負担が偏った税となっています。さらに、税収は、つねに景気変動の影響を受け、不安定です。そこで、景気に左右されることなく、かつ幅広い層に負担をしてもらう、「消費税しかない」という話になるわけです。
その消費税を増税するという議論の中で、よく問題にされるのが、「弱者の負担が大きくないのか」という点です。確かに、消費財は逆進的な税だと言われます。所得の低い人は全額を消費に回すので、消費額/所得額の割合が高く、所得の高い人は、貯蓄をするのでその割合が低くなる、つまり低所得者ほど税の負担率が高くなるというものです。
しかし、そこにも誤解があります。
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