首相にすり寄る玉木氏「異例の予算案賛成」で波紋 代表の大博打により国民民主党分裂の可能性も

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大平氏は宏池会領袖として首相を務めた岸田氏の大先輩。さらに、岸田内閣の政策決定のキーパーソンとされる木原副長官は、東大法学部→大蔵省(現財務省)入省の玉木氏の同期生。同省キャリア官僚の同期は結束の強さで知られており、「今回も木原氏がパイプ役になったのでは」(細田派幹部)との臆測も呼ぶ。

このため一部の野党幹部からは「玉木氏は将来、国民民主を岸田派の別動隊として『大宏池会構想』にも参画するのでは」とうがった見方ももれてくる。

これに対し、玉木氏は当初予算賛成の際、「連立云々ではなくてあくまで今回は政策本位の判断」と連立志向を否定してみせた。ただ、これも「あくまで表向きの話で、参院選後の連立入りを視野に入れているのは間違いない」(立憲民主幹部)とみる向きが多い。

採決欠席の前原代表代行に「離党」の噂も

確かに、国民民主が参院選後に連立政権に加わるか、閣外協力などで与党化すれば、「新たな政界再編の起爆剤」になる可能性はある。しかし、国民民主の所属議員全員が玉木氏の決断を支持しているわけではないこともあり、「結局、玉木氏は自滅する」(旧国民民主有力議員)との厳しい見方も出る。

玉木氏と並ぶ国民民主の顔とされる前原誠司代表代行は、22日の衆院本会議での予算案の採決を、体調不良を理由に欠席した。前原氏は予算案への反対を強く主張していただけに、「今後の展開次第では離党もありうる」(国民民主若手)との不穏な噂も広がる。

こうしてみると、玉木氏の今回の決断の背景や思惑は不透明な要素ばかりだ。参院選での自公改選過半数確保に命運を懸ける岸田首相にとって、玉木氏の決断は「大きなプラス材料」(側近)ではあるが、周辺からは「参院選後の政権運営を考えれば、結局、玉木氏を使い捨てにするのが得策」との突き放す声も少なくない。

泉 宏 政治ジャーナリスト

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いずみ ひろし / Hiroshi Izumi

1947年生まれ。時事通信社政治部記者として田中角栄首相の総理番で取材活動を始めて以来40年以上、永田町・霞が関で政治を見続けている。時事通信社政治部長、同社取締役編集担当を経て2009年から現職。幼少時から都心部に住み、半世紀以上も国会周辺を徘徊してきた。「生涯一記者」がモットー。

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